第56回例会報告:BSIAパートナーシップ分科会からの報告

第56回例会報告

今回の例会は、パートナーシップ分科会の報告である。

BSIAの分科会とは、例会とは異なり特定のテーマに絞った勉強会である。今回は、パートナーシップ分科会の一年間の活動を凝縮し報告をいただいた。

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パートナーシップ分科会報告

icon-check-square-o 分科会座長、佐々木典夫氏より

まず、分科会座長である、ビジネスサウンドの佐々木典夫氏より、より良いパートナーシップを築くためには、という当分科会の意義、今回の発表の骨子について説明をいただいた。

また、この分科会の発起人であり、BSIAそのものの発起人でもあられる、故片貝孝夫氏への、早すぎる逝去に対して追悼の言葉もおくられた。

icon-check-square-o 骨子

大きく下記の3つのパートに分かれる。

  • データモデル
  • 組織の熟成度
  • ヒト育成
  • この3つのパートは、更にサブパートに分かれ、合計で8つのサブパートの発表が行われた。また、最後に3つのパート毎に、まとめの部ということで総括も行われた。

icon-check-square-o データモデルの部、概要

  • 鳥の目を持って地べたを這う

明治座の事例をもとに発表された。複雑な業務システムを可視化する、又はユーザとIT部門、パートナー間のコミュニケーションギャップを減らすことが重要である。そのためには、言葉だけでは足りない。イメージを、強靭且つシンプルなモデルという形にして具現化しなければならない。

ビジネスを表現するモデルには、3つある。それは、データモデル、プロセスモデル、CRUDモデルである。更にこれを、トップダウンの経営視点、ボトムアップの現場視点でモデル化することが肝要である。

  • アプリケーション開発近代化への挑戦

NECの事例をもとに発表された。最近のアプリケーション開発は、上流の設計の比重が高くなり、実装周りは省力化している。更に、ビジネスからの要求として、短期開発、追加・変更への柔軟な対応が求められている。

そこで、アプリケーション開発とプロジェクトマネージメントを技術レベルで融合することが必要となる。具体的には、Xupper等のツールを利用したビジネス分析、標準化・均質化による品質を作りこむプロジェクトマネージメント手法(OODA手法)などが考えられる。

これらの、技術及び技術力でアプリケーション開発近代化の鍵となるだろう。

  • 業務アプリケーション開発の革新

業務アプリケーションは、パッケージなどの既製品、ERPなどのセミオーダ品、ユーザの要望に合致させたオーダーメイド品という種類分けができる。その中で、ユーザの要望に合致したオーダーメイドの領域で高速開発を利用することが、業務アプリケーション開発を革新するだろう。

高速開発では、従来の開発工程における、外部設計~単体テストをカバーし、自動化が進んでいる。結果として、要求の変更、環境変化に対してのコストが大幅に削減され、情報システムを長く使うことができる。

icon-check-square-o 組織の成熟度、概要

  • ソフトウェアプロセス改善とCMMI活用

日本タタコンサルタンシー・サービシズでの事例をもとに発表された。システム開発は複雑化の一途をたどっている。その中で、PMBOKベースのプロジェクト管理は多くの現場で行われているだろうが、それが場当たり的な対応になっているのではないか?

そこで、PMBOK手法にCMMIのプロセス改善のアプローチを取り込み、継続的な改善を目指していくのがいいだろう。CMMIのプロセス改善は、組織の作業プロセスを高める事を目的としており、ツールとして有効であるからだ。

但し、CMMIの5段階の成熟度を厳密に行うとタフである。また、CMMIレベル取得が目的となってしまっていたりすることもある。ここはあえて、CMMIのいいとこ取りをして、あえてゆるく活用することがいいだろう。

  • オーナーシップについて

JICAでの事例をもとに発表された。過去のプロジェクト失敗から、その原因を学びとして分析を行った。結果、原因は「プロジェクトマネージメントの不足」「オーナーシップの不在」「ガバナンスの不足」が考えられた。

そこで、これらに焦点をあて、情報システム委員会の設置・アプリオーナー制度の導入・ITIM(IT投資マネージメント)の導入を試みた。

情報システム委員会は、費用対効果の検証、システム開発の入口(開発開始時)、出口(開発終了時又は運用時点)での評価などを行った。

アプリオーナー制度では、情報システム委員会に対しては地方分権にあたる制度の導入であり、オーナーによる投資の説明責任を義務付けた。

ITIMに関しては、IT投資を戦略型とインフラ型に分類し、戦略型はROIを明確にすることが問われ、インフラ型は必要不可欠なもので、数値目標などは問わない、とした。

この3点の改革において、特にオーナーシップが重要であり、先んじて取り入れることがいいだろう。

  • 手作りERP構築によるIT部門改革

某メーカーのIT部門の改革の事例である。

改革の取り組み前は、本業に貢献できない、自律的な改善ができない、全体最適な視点の不足、自ら考える人材がいない、などの問題があった。活動としては、統合DBを全社のハブとし、ERPを手作りすることで行われた。

成果は実を結び、モノとしては手作りのERP基盤が出来上がった。更に、IT部門は企業のコンサルタントとしての位置に踏み出そうとしている。これらの成果は、クライアントとパートナーとの信頼関係があればこそ達成できたものだった。具体的には、クライアントとパートナーは共通の言語の構築、パートナーを業者扱いしない、仲間として協業する、最終ゴールの共有、などである。

icon-check-square-o ヒト育成、概要

  • ビジネスシステムのイニシアティブを事業部門に取り戻す

花王ビジネスアソシエの事例をもとに発表された。現状のITが、その技術領域や開発委託領域の拡大などがあり、更にヒトの育成が遅れたために経年劣化を起こしている状況になっていた。特にパートナーがIT部門のイエスマン化し、事業部門への価値の提供がおろそかになっているのではないか、これでは会社が危ない、という危機感を持った。そこで、具体的な施策として、一括請負から「納品のない受託開発」という思想にシフト。

このモデルでは、IT業者とは長期のパートナーシップを確立し、継続的に価値を提供し続けるものだ。そして、超高速開発の手法も取り入れた。さらに、事業部門を第2のIS部門とし、競争力の源泉を自らの手で獲得する施策も導入した。結果、この内製の経験が人材を育て、さらにパートナーへの尊敬に繋がることができた。

  • 公共機関の組織力向上と人材育成

特許庁CIO補佐官からの発表。国家方針として、世界最先端IT国家創造宣言がある。その中でも語られているが、政府や公共機関は、民間に比べITガバナンスが不足している。その原因はいくつかあるが、大きいのは人員のローテーションモデルである。公共機関においては、情報システム部門に配属されても1~1.5年で異動となる。さらに自分たちでモノ作りを経験することもない。だから、知識が継続的に蓄積、継承されてこなかった。この問題を解決することは容易ではない。特に人員の流動の問題が大きい。

そこで、個々人に依存せず、組織全体の能力を向上させるモデルを模索した。具体的には、プロジェクト管理体制の強化としてPMO機関の設置、CIO補佐官などの流動しない外部人材の登用、管理方法の標準化などを行った。更に、今後は組織運営のガイドラインを方法論、手引書として確立すること、社内で使うシステムを内製してみるなどに取り組んでいきたい。

ここまで、全8パートについてその概要をまとめた。それは、あまりにも内容が濃いので、ポイントだけのまとめとなっている。これには理由がある。この全8パート、そもそも分科会では各1時間でプレゼンがなされたものである。これを今回、各数分で発表するという形式となり、中心となるポイントのみの超ハイテンポな発表にならざるを得なかったからだ。

このような背景ではあったが、今回のパートナーシップ分科会、ユーザ企業とパートナーとのより良い関係を築くための様々な工夫の結晶の報告であった。

熊野憲辰(株式会社 リフレイン・BSIA運営委員)

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