第54回例会報告:リゾートトラスト「システムイニシアティブを取り戻せ」

第54回例会報告

2015年の最後となる例会が新丸の内ビルディングにて開催された。かつてから講演依頼を行い続けてようやくの思いで実現したのは、リゾードトラスト株式会社の立花氏による講演である。テーマは「システムイニシアティブを取り戻せ」~システムイニシアティブを失ったIT部門がイニシアティブを取り戻す方法~について語って頂いた。

立花氏のご講演の概要

icon-check-square-o システムイニシアティブを取り戻す必要を感じた出来事

今回のテーマとなるシステムイニシアティブを『取り戻さなければならない出来事』が起きた。それは、ある案件が発生した時に立花氏の肌感覚で想定していたコストよりも3倍掛けてしまったことであった。そもそもの理由は、自分たちには分からないという理由で丸投げを常習的に行ったことに始まり、外部への依存度が高まったことが原因である。

この出来事をきっかけに自ら外の世界に出て行き、世の中との接点を求め始めたがいきなり衝撃的な出来事が胸を打った。Javaの技術者と話をした時の出来事である。自社のJavaのバージョンが新しいと思い込んでいたが、実はとても古いバージョンを使用していることに恥ずかしさを感じた。自社内部しか見えていない状態が続いたため、世の中の動向や最新版等の情報を理解できていないことに対して、どうにかしなければならないと強く感じた。

icon-check-square-o 自ら行動し気付きを得る

危機感を感じた結果、様々な勉強会へ参加していく中で1つの重要なキーワードに出会った。2011年に開催されたシステムイニシアティブのイベントである。このイベントは衝撃的で、まさに必要としていたものを発見できたと心から感じることができた。

社内に戻り、まず過去における自社のシステムイニシアティブ率の変遷を振り返ることにした。90年代から現在に至るまでのシステムに携わる社員の主導権と外部に頼る比率をまとめてみたところ、徐々に外部依存率が高くなっていることに気付いた。90年代はイニシアティブ率80%の高い状態から、2000年になり一気に40%に落ち、そして現時点では30%と落ち込んでいた。いい意味でも、悪い意味でも衝撃的な事実を突きつけられた。

とにかく何とかしなくてはとの思いから、自ら講師となり就業時間以降を活用して月1回のペースで勉強会を行うことで、基礎体力を高める活動を地道に実施した。その後実践として、社員を中心とした要件定義のプロジェクトを5回ほど試みたが、全て見事に失敗をした。しかし、ここで終わる訳にはいかず、更に社外のイベントや情報を貪欲に求め続けることで、様々な世の中の動きを捉えつつも、将来のシステム構想を温めていた。その時出会ったのはEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)である。4つの層があるが、そこにはライフサイクルが関係していると考え、特にデータ構造は一度しっかりと構築すれば10~20年も大きく変化しないことが分かった。証拠として、自社のデータベース構造は40年前の形を現状も使い続けているからである。

icon-check-square-o データを押さえることが最も重要

自信と強い確信を持ち始めた結果、モデリングが最も大切であることに辿り着いた。実際にパートナーと共に現状の姿を描いた時に会社の業務が全て分かると同時に、データの流れを全て押さえることが出来た感動は今でも鮮明に思えている。社内全てのシステムを描いて関連性を描く中で、他社事例に「データHUB」の考えを取り入れて構想した時に「これで行けるぞ!」という姿を、自信を持って描くことができた。「データHUB」の良い所として、基幹システムは時代のトレンドや技術によって変わるが、しっかりとした姿を描いて構築すれば、今後大きく手を加える必要はないという確信も湧いてきた。

さらに、この姿から今後のさらなる展開を考えていた時にふとあることに気付いた。過去にSOAを採用しようとして構想を練ったが、実現できない苦い思い出がよみがえったのだ。よく考えてみると、擬似的ではあるが「これはSOAではないか」と思い、過去にチャレンジしようとして考えていたことが無駄ではないことを身に染みて体験した。

現在は道半ばで結果はまだ出ていないが、次世代の社員が入社したことで見事にバトンタッチをすることができた。

今後の立花氏は業務改革を中心とした役割になるが、業務とシステムは深い関係性があるため、今後も連携を深めて良い成果を実現できるよう努力していきたいと力を込めて話していた。

icon-check-square-o 結論

システムイニシアティブを取り戻すことは、業務フローを作成することで業務を理解する事と、データフローを作成することで社内のデータの流れを把握することであると、立花氏は力を込めて会場の人々に力強いメッセージを伝えた。

icon-check-square-o 質疑内容

Q.SOA、EAは経営層の説得が難しいためあきらめたが、それでも理解をもらいお金を出して頂いて実現できたのはなぜか?
A.予算を元々確保していた為、ある程度好きにやらせて頂きたいことを、担当役員に対して説明した。特にSOAは、次の段階で確実に行わなければならないことを粘り強く説明し、理解して頂き決裁を頂いた。
Q.データハブはバッチ処理でデータ連携を行うが、リアルタイム性を上げる為の対策はあるのか。
A.データハブのデータから他のシステムへサービスとして連携したいと考えている。次の段階のSOA構想を実現することで、リアルタイム性を高めることができると考えている。

坂本 克也(BI-Style株式会社・BSIA運営委員)

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