第1回例会報告
1990 年代後半、アウトソーシングという名のもと、システムの開発や運用を社外に出す動きがありました。もちろん当時のこの選択は正しいものだったのでしょう。
しかし、10 年以上経過した現在、様々な弊害が生じています。ユーザ企業は、自社のコンピタンスを、ベンダーに丸投げし、自ら考え、もの作りを行う気力を失っているようにも見えます。また、SI ベンダーも企業をロックインすることで、経常的な収入はあるのでしょうが、国際的な競争力を失ってしまっている気もします。この「丸投げ&ロックイン」構造は、ユーザ・ベンダー双方にとって 得策ではありません。日本のIT 産業をダメにするといってもいいでしょう。
それは、何故か? また、実際現場でどのようなことが起きているか? ゼリア新薬工業株式会社の熊野憲辰氏に、実際の事例を踏まえてお話しいただきました。
1.業務を追いかけろ。
→UMLか、ER図か、どんなツールを使って書くかは問わないが、ユーザー自身が業務を整理して可視化することが最も重要であり、この20年間ですっかり失われてしまったことである。
熊野さんは「まずモデリングから始める」ことを薦められていました。
「会社(の業務)を書く」「誰よりも会社に詳しくなる」ということはユーザーにしかできない、ユーザーがやるべきことなのです。
2.技術を追いかけろ。
→ハードウエア、ミドルウエア、アプリケーション、開発ツールなど技術トレンドをしっかりと追いかける人材をおき、重点投資するもの、外部に任せるものをしっかりと切り分けてリスクコントロールと投資コントロールを間違えない。
印象的だったのは、「技術は短く、原理は長い」という言葉です。
アウトソーシングする理由の一つとして、情報システム部員が最新技術を追いかけることの難しさが挙げられることがありますが、ユーザーとして追いかけるべきことや範囲が明確であれば、難しくはないのだと、熊野さんのお話でわかりました。
3.変化を追いかけろ。
→事業や市場の変化に追随できる人材開発やパートナリング、開発方法、開発基盤の整理と推進を行う。
変化に強い開発は、
□業務の見える化
↓
□対応力のある開発手法・ツール
↓
□効率性と漏れのないテスト環境
を踏まえる必要がある。
熊野さんは「変わることは、成長そのもの」といいます。システムのカットオーバーこそが「始まり」なのだとも。
所感
参加者は45名。2時間があっという間に過ぎました。
講演の後は個別のQAに終始してしまい、上記のように、参加者の皆さまの見識を議論する場が準備できなかったことが、事務局としては反省点です。研究会の運営自体も、変化を追いかけて、絶えず改善を続けていきます。この研究会が、
「聞いて理解する」から、
「整理して身につける」
「応援者と知り合う」
「積極的に実践する」
ための場となるよう、運営していきたいと思います。
吉田太栄(システムイニシアティブ研究会事務局)
※ブログでご紹介いただきました。→ ジャスミンソフト日記