第79回例会報告:田中秀樹氏 「業務システムのグローバル最適化への取組みと事業を横断したデータ管理基盤の構築」

第79回例会報告

業務システムのグローバル最適化への取組みと事業を横断したデータ管理基盤の構築

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4月25日、第79回の例会が開催された。今回の講師は、セイコーエプソン株式会社 IT推進本部 情報化推進部 部長 田中 秀樹さん。 講演タイトルは「業務システムのグローバル最適化への取組みと事業を横断したデータ管理基盤の構築」 セイコーエプソンでは新たな顧客価値創造に向けて、企画、設計から製造、販売までバリューチェーン全体を最適化する「垂直統合型ビジネスモデル」への変革を推進している。そして、このビジネス変革を牽引するために、グローバルIT基盤の全体最適化に取り組んでいる。その施策は、業務領域ごとのアプリケーション標準化と疎結合化による新規事業立ち上げへの迅速な対応や、企業全体でのデータマネジメント強化による事業横断での情報活用高度化など、多岐にわたる。 本例会では、セイコーエプソンのグローバルIT戦略とそれを実現するプロジェクト「Eutopia(ユートピア)」についてご紹介頂いた。

概略

まずは企業の根幹である垂直統合型のビジネスモデルについて説明、お客様に届ける為にコアビジネス・コア技術に関しては全て自社内でプロセスを回している。このビジネスモデルがグローバルも含め全社に浸透していることを感じた。それはIT改革の旗印であるEutpiaしかりである。グローバルでEutopiaに関わるものしか作ってはいけないという徹底した姿勢であり、それが社員一人一人まで胎堕ちしている様子が見てとれた。

従来の情報システム部門は業務の困りごとを聞いてそれをコンサル会社やインテグレーターに相談するのが役目だった(これすらできていないところも多くあると思うが)が、作ったシステムの効果を計測するところまで責任を持つまでに変革を遂げた。田中氏自身が生産技術出身だということもありその改革は現場にも受け入れられ現場にとって役に立ち実際に効果を発揮するものになっている。設計・製造の情報から製品情報を営業・業績計画・お客様まで情報を連携する。今に始まった情報連携ではなく過去にデータ連携基盤を構築してその上に情報連携基盤を構築することを可能にした。疎結合のAPIで情報連携を容易に構築できるようになっている。少し前に言われたSOA基盤ができていることになる。また要所要所で最新のテクノロジーを的確に採用されているように思う。MDM、CRM、PIM、CMS、データ分析等々それぞれの分野でInfomatica、Tableau、SAP、DataRobot、obbligate、VPS、hybrisなどを採用ししっかりと活用している。

人材育成に関しても過去のITSSの失敗を克服しテクニカル・ヒューマンの両面でまた個人・組織の両面で成長のPDCAを回している。目標面談シートを魂を入れて運営していてその評価にi-コンピテンシーディクショナリーを活用している。iCD活用1000社中ベスト3に選定されゴールド2スターを受賞している。ここまで本日の講演の概略を記載したが、詳細を確認したい方は若干長い記述になってしまったが以下詳細をお読みいただきたい。

詳細

◆垂直統合ビジネスモデル

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何故こういう全体のプロジェクトが持続するかの理由付けにもなっている。独創のコアデバイス・コア技術をベースにして上向きの矢印にあるように自社内で全てのプロセスを回しているというのが特徴となっている。しっかりとビジネスモデルを強く早く回すことがお客様の価値を確実に早くお届けするという思想である。企画・設計・製造・営業をしっかりバリューチェーンとして回し、上にある双方に矢印があるところ太くすることにより新しい価値を広げていく。

◆IT推進業務の概要
私の所属しているIT推進本部は一般的な情報システム部門を少し広げた形になっている。社内向けITとお客様向けITとIT共通基盤に分類されている。ファームウェアは各事業部で担当しているがネットワーク等製品の外側のソフトウェアは私達が担当している。会計パッケージを開発し販売している(ここが意外でした)。社内向け、社外向け製品共通してグローバルインフラやミドルウェア等を構築しているIT共通基盤がある。全グローバルで一つのポリシーでITガバナンスを効かせている部署もここに属している。社内向けIT240人、お客様向けIT200人、IT共通基盤200人の体制で推進している。

◆グローバルIT戦略
グローバルで統合された全社最適の仕組みをITを活用し作り上げる。ITのプロだけでなく連携のコアになるということも行動指針にある。2014年度上期までに300台のホスティングを閉じることが決定して以降はクラウドファーストでIT構築をしている。Cloud First&Fastで活動している。FirstはまずCloudを考えると言うことFastは早くSpeed感を持ってということである。2016年にデータセンターを閉じた時にAWSに120台寄せたがそれ以外は他のホスティングに存在していた。このことによって費用は20%削減、構築期間も3ヶ月から1ヶ月に短縮でき早く立上げ終わるときには利用停止できることがメリットを享受できている。ただ課題としては、当初ホスティングで置いていたサーバーと同じ構成で移している為限られたコストダウンしかできていない。アプリケーションの開発・運用効率化には繋がっていないということになる。アプリケーション・ミドルウェアの標準化を進めSaas・Paasにもっていく必要がある。

◆社内業務システム
従前個別最適で構築したシステムが500を超えていた。ここに起因する問題としては事業横断で採算分析とか適正判断ができないとか新規事業や商品対応に時間がかかるといったことが挙げられる。既存事業にシステム化が集中していた、主要事業であるプリンター事業のシステムが特に充実していた。2014年に改革を開始した。サイロ型を標準化するのが対策の中心であった。設計生産拠点は事業部ごと販売・サービス拠点はエリアごとにシステムが作られていた。販売拠点においてはエリアを統一する、設計・生産拠点においては事業の横串を通すということを始めてきた。生産物流、製造情報、製品情報という業務の大きな括りの単位でワーキンググループを作ったり組織を作ったりして改革を進めて来た。2014年の秋くらいにこの企画を経営会議に持って行って承認してもらった。
4つの目的をもって改革を遂行した。

1.業績管理の質の向上
2.新規事業領域拡大や事業統合分析の対応性
3.継続的なコスト削減
4.社会的信用の向上

この4つの視点で目標を定めている。以下KPIの一部を示す。「経営」(業績管理の質)経営者への情報提供の充実度、(事業変化対応性)迅速なシステム導入や変更、(コスト削減)、(社会的信用)製品トレーサビリティの確保、「業務」(業務課題の達成)、「システム」(標準システム数)標準システム製定数、機能標準化(同一システム内での機能標準化率、(システム標準化)各業務領域での標準化率Eutopia始動理想郷という意味では確かに綴りが違うが、敢えてエプソンのEをつけて「Epson Unified Technical Optimized Information Architecture」でEutopiaとした。この名前は私が命名した。私はデザイナーでもなんでもないのですがコンセプトイメージ図も自分でデザインした。初期の平面的な図ではわからないという評判だったのでデコレーションケーキをイメージして立体的した。(3D-CADで作ったとのこと “さすがエンジニア!”)。

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なんで外側にインフラがあって中心にマスタがあるのだと言われた。そこで立体化して土台にインフラがくるようにした。その上に全社共通のアプリケーションがのってその上でバリューチェーンを回す設計・製造から顧客接点までが回っている。真ん中からひとつ外の円が経営情報となっているがこれはバリューチェーンで発生した情報が全て真ん中の経営情報に集約されデータ統合されるということを意識している。そして一番大事なのがマスタ統合ということで真ん中にある。今言ったことをシステムマップに表現するとこんな感じになる、上半分が業務アプリケーションということで左から右にバリューチェーンが進んで行く。生み出されたデータは下の経営情報に集まる。それを底支えするITインフラ、ITプラットフォーム及びオフィスITがある。オフィスITというのは社内用語である。メールとかTV会議であるとかSkypeであるとかプリンター・プロジェクターをネットワークで快適に使っていくとかそういうものを総称してオフィスITというものになるということである。

4年前に同時に出しのが業務システムのグランドデザインである。7つの業務領域毎にどういう方向性を出していくかということをまとめたものになる。設計の領域は同一目的で使用する設計ツールは統一する。メカCADだったらCreoを使うエレキCADならCR-5000を使う。製品情報のところはいわゆるBOMになる。BOMの改訂も実施したが、組立系とプロセス系を一つにできなかった。組立系はいくつもの部品が集まって1つの製品を構成するという構造を持っているのに対して加工系はプロセス系というのはウェハーの基盤とかガラスとか複数に製品ができて行くという関係性を持っているのでこの二つを組合わせて製品情報を作るべきだということを示している。

3番目の製造情報はいわゆるMESの部分である。生産方式ごとに標準システムを全て内製で作りあげている。部品製造系のMESと完成品組立のMESがありこの2種類MESで全ての製品に対して工場で動かしている。(通常これでも凄いことだと思う。なかなか2系統にさえ整理できないものです。)その前にプロセス構造があるのだが、そこの部分は生産設備と一緒になてしまっているのだが、部品の組立以降はこの2種類で全てやっている。*MES(Manufacturing Execution System)需給計画も売り方とか作り方のタイプで計画のパターンを作っている。生産物流はSAPを古くから使っている。顧客接点のオーダープロセスもSAPを使っている。経営情報も標準化するという統合の方向性を最初に示している。バリューチェーンの全体俯瞰にあたっては特別な思想も持っていないのでEAで作成してみることにした。商品化プロセス・システム機能マップをインプットにして、業務フローなりこれはオリジナルだがシステム化業務フローマップを作成した。システム化業務フローマップは業務フローに対してシステムの機能のブロック図をマッピングしたものである。どの業務フローや業務がどのシステムで実行されているかの関連を見る図である。それからデータモデルを作成している。その後再設計後のシステム機能マップとデータ連携図を作成している。

コンサルの皆さんに相談するとBAからやりなさいと言われるが、我々はシステム機能からやった。今回対象の業務がどちらかと言うと基幹業務だった。ヒアリングして業務を組み立てていくものではなく世の中一般的なパッケージソリューションで対応できる領域だった。業務の皆さんはこのプロセスに業務をあてはめていくのは一番と話しをした。基幹業務は決まっていて価値のでるところではない。価値を出すところは製品としても特徴だったり自分たちで工夫したプロセスや改革のところに対して価値を出そうということを話して基幹系に関しては機能からやっているというのが特徴である。(あっているかどうかわからにとのことでしたが、コンサルの話しを鵜呑みにして通常のやり方をコピペせず自分で考えてベストなやり方を選択されているのが素晴らしいと感じました。)システム機能マップ解説8つの業務領域ごとにブロック図になっている。事業が立ち上がったり変更があった場合に立ち返るバイブルというか羅針盤になっている。

◆アプリケーション基盤
2年くらい前にどういうミドルウェアでやっていくべきかを検討した。扱うデータ量が大幅に増加している。IoTの影響が大きい。設計・製造の大量データにネットワークを耐えられるようにしようとか取り込んだデータを大量に処理できるようにしようとかを検討した。バリューチャーンの情報連携をもう少し最適かしようとか情報活用のところではBIとかAI活用の基盤を作るということで課題をあげている。

◆Eutopiaについて
・共通基盤構築
2000年前半に当時EAIという言葉がはやった時に自分も生産技術出身なのでシステムを全て疎結合でつないでシステムや情況の変化にリアルタイムで対応しようという思想だった。その時にメッセージ型の情報パスという形で入れた。JMSで通信していてアプリケーションは全て疎結合で繋がっている。そのベースがあるのでそこに更にデータ統合基盤を構築した。データレイクにデータを集めてデータウェアハウスで使いやすくするそしてデータマートをそこで認定を持つという設計を今やっているところで発展途上ということになる。さしあたりできているのは統合マスタと製品情報(PIM)といったところが情報流通基盤にのってお客様に製品情報が流れることになる。今は経営情報(お金の情報)しかのっていないが、今後構造化されていない情報もデータ情報基盤上に載せて統合的に使えるようにして行く。(疎結合のAPIでデータ連携モジュールが準備されていて、その上でプロセスを実装することを考えればいいだけの状態ができている。通常はシステム実装においてデータ連携がうまくできずに失敗することが多いので先にこの部分が出来上がっているのが凄い)

・アプリケーションの作り方
すべてモデル化しようということで標準化モデルを定めている。3階層必ずアプリケーションを作る。買ってきたパッケージのアドオンでもスクラッチ開発でも全て3階層で設計する。ベースになっているのは全社の業務標準の共通のモデルでこれが第一層目になる。第二層目は業務タイプ別機能ということで生産方式とか販売の売り方とかビジネススタイルによって機能を制御している。更に拡張機能系は拠点や事業の事情でそこに追加しなければいけない時にはそこに付け加える。一番わかりやすいのは画面系・帳票系は3層目に作ってあるということになる。最初導入してまだまだモデルが覚束ない状態から徐々にモデルをしっかりしていって標準化の部分を増やしていこうということでそれぞれのアプリケーションで進度が違うのだが徐々に確立されたモデルにして行こうということを最初に示している。ここでの成果物であるシステムはエプソンITプラットフォームという形で制定されてグローバルではこの仕組み(Eutopia)以外使ってはいけないことを原則としている。ある条件でこれを使いなさいと言っているので、その条件にあてはまらなければ他を選んでもいいということになっている。

・ロードマップ
2014年は調査・企画フェーズだった。2015年から3年間はプリンターやプロジェクター・ロボットといった完成品のビジネスに共通システムを入れてきていて目処がたってきている、今後は水晶デバイスとか半導体とかウェアラブルウオッチとかに標準化の波を進めて行く段階である。

・活動の進め方
業務部門の目的でこういう仕様にしようといわれてきてしまう。それを跳ね除けるのが垂直統合のビジネスモデルにどれだけその業務要件はあてはまっていますかというやり取りをしている。(ぶれない基本理念)お客様に対して役に立たないもの仕様にいれませんと話している。お客様にQCDが向いていないといけない。グローバルで組織の枠を取り除く調整役にもなろうとしている。それからメソッドですね、事業や法人と一緒に目標を立ててやる。システムだけいれて業務で運用しながら効果を測ってくださいなどということはやらない。システムデザインレビューで効果判定まで実施している。

◆業務領域別活動
・統合マスタ・経営情報管理
分散化したマスタを標準化して集めてそのマスタをそれぞれの業務システムに配信している。実施の実績情報はデータウェアハウスに入ってきている。そこで鮮度を上げて管理会計・連結会計・マネジメントコクピットで情報を出している。データ分析サービスをかかげて機会学習やビジネスインテリジェンスの環境を業務ユーザーに開放している。

・マスタ統合
Infomaticaの製品を活用している。順次50個のマスタを立ち上げている。2018年10月に50個のマスタ全てが立ち上がる。最初に目をつけたのはコーポレートマスターで、為替レートとか事業軸とか地域とか取引先とか品目である。取引先と品目は2000年初頭にグループで共通化している。今あるOracle ESB上で動いているが、これが保証切れなので順次Infomaticaにのせかえていくだけである。得意先コード・品目コード・部品コードもそうで、それ以外のマスタを整備しているところである。計上部のところは単体会計・連結会計のデータの定義に合わせて機能を組み立てているところである。マネジメントコクピットで業績に関するデータを表示する画面を作って公開している。事業部・お客様ごと・エリアごと・固定費、変動費等費用ごとに見れる仕組みを作っている。

データ分析サービスではデータウェアハウスに溜まったデータをデータプレパレーションして鮮度のいいデータを使って行く。1~6までのデータ分析モデルを定義している。BIはTableauを使って全社共通のツールにしている。機会学習については私のところに15名のデータサイエンティストがいる。そのメンバーがDatarobotを使っている。Datarobotは昨年入れた。ここで予測モデルを作成して、DataRobotでコードもデプロイしてくれるのでそこでドンドン動かしている。

・設計支援領域
情報部門が設計領域を持っていない会社が多いことを最近知った。生産技術出身なので自身はこっちの方が得意である。設計系も自分の部隊に持っている。CADの標準化・シミュレーション・いろんな解析的な環境を準備している。上流から下流にかけて構想設計段階で使うもの設計力を強化するためのCAD評価段階で使う機能検証のツールを選んでいる。量産に向けて生産性のシミュレーションをする為のツールこれは組立易さ、組立コストとかあとはラインの設計に3Dのうちは富士通さんのVPSを使用している。

・製品情報領域
CADの情報が自動的にこのシステムに入ってくる。自動的に設計部品表が作成される。NECのobbligate3を採用している。他の会社さんではわからないのですがエプソンでは技術部品表を用意しなければならない。これは作り方の情報である。機能を構成するのが設計部品表だとすると技術部品表は作り方のレシピや技術情報まで入っている。この間を繋ぐのにマトリクス部品表をNECさんと協同開発した。設計部品表の中の仕様を変えたときにそれが仕向地のどこに影響するかがマトリクスでわかるような仕組みになっている。最初はエプソンに為に作ろうとしていたが、これは売れるだろうということで今はobbligate3の機能に入っていて売ってもらっていると思う。その情報が生産BOMに流れてそこにSAPがあるということになる。

・製造情報領域
部品製造からだんだんと完成品製造に行く。 部品製造管理と組立製造管理という二つの標準システムを内製して作っている。マスタ駆動型になっていてどういうものをどういう順序で流すということをマスタ設定すると動くという状態になっている。設備保全システムというのも内製でパッケージングしていてIoTから流れてくる情報をこの中に入れて予知保全や予測・計画保全とか点検の時期がきたら自動的にメールを出すとかそういう一般的なツールを仕立てている。場内物流管理はeかんばんの仕組みを東南アジアと中国で動かしているが、今まで紙で回していたものを全て作業者からの電子的な指示で動くようにしている。要求があった時に部品のピッキングをする間にどういう順番で倉庫に取りに行ったらいいかとかいつまでに届けるかということを自動計算して作業者を助けている。

製造情報で話題性のあるのはやはりIoTのところだろうというとこで、弊社も強くやっているところである。データ活用レベルを調べたがあまりいいものがなかったので勝手に6段階に定義した。データを手作業で収集するところから最適化までを6段階に分類した。当社はどこまでをいつまでにやるかをロードマップに入れてやっている。ロボットやセンサー、AGVあるいは人からデータを集めて、エッジで判断してもう一回返すというのもあるし製造管理システムMESの中で管理しているものもあるし最近は機械学習を一番上に入れてカメラで撮った大量のデータを分析して不具合の原因を究明してルールとして現場に返すということもやっている。がまだ発展途上で、エッジのデータ収集が悩み。業界標準がなくこのあたりの動向を見極めきれていないところが問題。

・生産物流
SAPを標準で使っているのでSAPのモジュール構成を標準設定している。それに足りない計画機能や部品物流機能等々サプライヤーに出している電子カンバンを作っているとか出荷物流機能とか通関事故を防止する為の機能をアドオンで付けているというのが現状。1層目はSAPの素のバニラの状態で組み立てている。

◆顧客接点
4つのブロックで顧客接点のシステムを標準化している。一番上の層はグローバルWebシステムで商品の情報を事業部からお客様に届けるシステムである。二つ目がPre-SalesなのでCRMです。CRMも標準化していく。3つ目はオーダープロセスで販売の基幹になるのでSAPでグローバルに標準化する。最後はサービスサポートで市場の品質情報をしっかりとらえる。この4つで標準化を進めている。

・Global Web Platform詳細
PIMとCMSの組合せになってる。PIMは事業部から販社に出す情報の仕組み。CMSはhybrisでグローバル統合していてそれを組み合わせている。従前は様々な情報がいろんなところにバラバラに存在していてそれを販社の人達がとりに行く情況で取った情報はそれぞれの販売会社の中でオーガナイズされ整形される。お客様から見るとバラバラで古い情報も含めて扱われてしまっているというのが今までの情況であった。それを1年かけて現在の情況にした。事業部から出す情報はフォーマットを統一している。いくつかのテンプレートを用意している。Infomatica PIMがそこから情報をさらってオーガナイズする仕組みになっている。各販社のローカルPIMに流れてそれぞれの販社のCMSに繋がっている。これにより間違いなく各拠点に情報が伝わり情報漏洩のリスクも軽減できた。昨年10月にグローバルで一斉立上げした。

◆人材育成について
人材育成モデル作成したが、コンサルは入れていない。我々は自身のIT力・業務知識を磨かなければならないというのがベースになっている。過去に失敗はあった。2003年から取組んだがITSSで失敗。世の中のコンサルやアーキテクトやデベロッパーとか定義されているところとスキル診断してメンバーにはさあスキルを上げろということを苦し紛れに3年間繰り返して終わった。その会社、その組織に合った役割とスキルレベルを定義しなければならないと思った。

UISSという情報システム部門の為のスキル診断ツールがあった。それを診断ツールとして使うのではなくて業務分掌を作った。エプソン25という長期ビジョンからくる中期計画に向けて自分達はどういうことを求められているかということで組織設計してその機能のところに業務分掌をあてはめた。膨大なUISSというものからピックアップしているし、そこから業務タスクやスキルを紐付けている。それぞれの組織・個人の中で目標管理をしっかりやって、自己成長のPDCAと組織のPDCAを4年間回して来ている。これは結構成功してきている。

具体的には大きく3つの領域で設計している。一つは業務知識で、ユートピアの.単位で課ができている。その課をいかに業務知識をしっかりつくるかということを意識して8課が活動している。二つ目はシステム構築プロセスを標準化しようということでV字モデルとデザインレビューのゲートの設計とそのデザインレビューから何が生み出されるかのアウトプットですね何をチェックしてそのゲートを通すのかの設計をした。ここまで設計すると技術スキル・タスクのところが段々と見えてくる。4つの役割を大きな4つの括りにしている。情報化戦略担当、システム企画・推進担当、システム構築・運用担当、情報化管理担当である。その4つの大きな括りで研修カリキュラムを設定している。我々の仕事の仕方を定義してタスクを定義したことと業務分掌で我々が必要な知識・機能を定義したことが特徴となる。

個人のPDCAと組織のPDCAを回している。まずは個人のPDCAから話します。人事部が出してくるA4ペラの目標管理シート使っている。このシートに当部門の魂を入れて運用している。具体的には各自3年後の目標をテクニカルスキル、ヒューマンスキルの両面で設定し、半年毎に達成度を上司との目標面接で確認している。なお、テクニカルスキルはi-コンピテンシーディクショナリー(昔のITSS)を活用してスキル診断をする。その結果でスキル目標を再設定するというサイクルを回している。このサイクルを半年ごとに回しているというのがこの4年間にやってきていることである。やったかやっていないでスキルレベルが高かったり低かったりするのが見えるので目標のスキルに上げるのにどういう仕事や役割りをやらせるかを検討していく。

組織レベルに関してはレーダーチャート管理を2015年からやっている。だんだん輪が広がっていく感じになる。システム企画力、設計・実装力、プロジェクト管理力というのがあるが、これは4段階で測っている。高くなっているので縦のバーが右にいけば行くほどレベルが高くなっていることになる。企画立案指導をやってきた結果でバーが右側に寄ってきている。成功失敗事例の共有をもっとやっていかないといけないと言うことだったり、設計・実装力のところでは要件定義のカリキュラムを昨年やったとかそういう対策にどう繋げなければならないかをこれで考察している。お蔭様で認証取得ということでiCDを使っている会社が1000社くらいある中のベスト3に入ってiCDのゴールド2スターを昨年いただいて継続している。

●まとめ
1.当社の強みである垂直統合型のビジネスモデルを加速する施策
当社の特徴でもある垂直統合型ビジネスモデルを強くしない限り成長性が図れないということでそれが業務改革やシステム標準化に繋がっている。長期ビジョンや新規事業の立上げに素早くシステム構築をしていくということになる。

2.グローバルに組織の枠をとりはらい、業務改革に自責で取組む。
とかくシステム部門はIT化を担当すると見られがちだが、もっと業務側に入りこんでその調整役をもつしかないということでこの4年間やってきている。

3.業務の仕組みを標準化し、柔軟に対応。
標準データモデルを3階層にしてカチッと作るところとやわらかくして後から拡張するとかモデルを追加するという構造になっている。いろんな経験や事業のバラエティさが富んだときにどんどんブラッシュアップされる。

4.達成の証しであるKPI/KGIの明確化と計測
時間の関係であまり話しできなかったが、こういうところを業務と握りながら成果まで私達が測っていくということですね。

5.請負型から提案型への変革と自ら構築できる人材育成
リーマンショック前までは請負型でずっときたので我々も手配屋と呼ばれていた。業務の困り事を聞いてコンサルとかITインテグレーターに相談する役目だった。そうではなくて自分達がやらなければ自分達の存在意義がないというところを2009年くらいから気付きだして人材育成とともにEUTOPIAを2014年に立ち上げてここまで来ている。少しは提案型になってきているのかなということでお話ししました。

リコーITソリューションズ
江戸 栄一

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