第78回例会報告
ビジネスシステムイニシアティブを手中に ~ DeNA IT戦略部の取り組み ~
2018年3月例会は 「ビジネスシステムイニシアティブを手中に ~ DeNA IT戦略部の取り組み ~」 と題し、株式会社ディー・エヌ・エー 経営企画本部 IT戦略部 部長 成田 敏博 氏 にご講演をいただいた。
3年前、DeNAはシステム企画・構築・運用における「ベンダーへの外注」を完全に止め、以降、情報システム部門にあたる約30名の「IT戦略部」のメンバーのみで100%内製での運用を実現しているとのこと。これを担う組織体制やメンバーのスキル、様々なソリューションを組み合わせたエンタープライズITの在り方、DeNAが進めている具体的な取り組みを聞いた。
DeNAのビジョンは 「インターネットやAIを活用し、永久ベンチャーとして世の中にデライトを届ける」 となっており、このメッセージが従業員、企業カルチャーに大いに反映している。特に最近は 「インターネット+AI」 を強みとしており、自動運転のロボットシャトルバスやロボネコヤマト、DeNA+日産の取り組みなど経済紙上をにぎわせていることはご存知の通りである。
IT戦略部が築いてきたシステムの特徴は各種ソリューションの連携で業務を回していることであろう。例えば会計に関連するシステムは クラウドERP: NetSuiteを中心として、クラウド経費管理:Concur、BIツール:Tableau、連結会計システム:DIVA、固定資産管理:ProPlus などが連携して成り立っている。このようなソリューション連携システムを基幹業務で使いこなしていくには綿密なソリューション調査とデータ連携のための基準作りがなされていると想像した。
そのIT戦略部の FY17の主な取り組みは、RPAを活用した業務効率化、請求書の電子化、ビジネスチャット Slack の実用化であった。 この実績の上で、FY18では AIカンパニーとしての土壌づくりを進めると成田部長は語る。AIの研究開発を行うAIシステム部では人材確保を積極的に行い、AI活用企画のためにAI戦略推進室を充実させ、校正支援や問い合わせチャットにAIを活用していく。加えて、請求書の電子化に続き受発注など紙媒体業務の電子化を進めたり、RPAの適用業務拡大を目標とする。さらに、チャットツールとして導入し、社内に定着した Slackを他システム(NetSuiteやConcur、Kintoneなど)のUIとして活用範囲を広げていくとしている。
これらを実現する推進体制として、産学共同研究を実施したり、特徴的取り組みとしてインターネット企業10社の社内IT施策共有会を競合の壁を越えて開催し、互いに学び合いながらシステム構築を模索、実施していくと語る。
その後、参加者とのディスカッションでは
・クラウドソリューションを連携した業務システムではデータの連携に苦労があるのでは。
・SAPやOracleでなく、当時は実績が充分でなかったNetSuiteを選択した理由
・ビジネス部門側ITとIT戦略部との関係、IT戦略部の人材採用
・ITベンダー依存から内製化にかじを切った英断の理由
・コミュニケーションツールに留まらず活用を計画するSlackの良さは?
など 積極的かつ突っ込んだ質問が出された。
最後の「Slackの良さは?」の質問では、ユーザビリティとソリューション連携の良さを上げ、今は95%の社員が使うまでになり、これまで手掛けてきたシステムの中で唯一ユーザから礼を言われたと破顔していた。
最後に、講演を快く引き受けてもらっただけでなく、会場の提供、運営のサポートも引き受けていただき、更に、ざっくばらんな雰囲気でディスカッションをしたいと、ビールとつまみをサプライズで準備していただくなど運営にも多大のご協力をいただいた。この場を借りて御礼申し上げます。
清水 滝夫(有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所 BSIA運営委員)