第72回例会報告:木附敏氏 「日産自動車におけるIS/IT中期戦略の歩みとIS/ITトランスフォーメーションの取り組み」

第72回例会報告

9月21日、第72回の例会が開催されました。今回の講師は、日産自動車株式会社 グローバルIT本部 本部長 木附 敏さん。講演タイトルは「日産自動車におけるIS/IT中期戦略の歩みとIS/ITトランスフォーメーションの取り組み」でした。

日産自動車では、会社の中期経営計画と連動した情報システム部門の中期戦略を実行しており、これまでBEST、VITESSEという2つの中期戦略を完遂し、2017年4月よりINNOVATEという新しい中期戦略に取り組み始められたとのことです。今回の例会報告では、2つの中期戦略の振り返りと現在取り組んでいるINNOVATEの概要をご紹介いただくとともに、これまでの日産の情報システム部門の変革の歴史をご紹介していただきました。

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日産自動車の概要

日産は通常のIT部門がITとISが分かれている。木附さんはIT側でグローバルにITインフラの面倒をみている。日産にとって寂しいかな日本が小さい市場になりつつある。今年上半期でルノー・日産・三菱で世界最大の販売台数になった。二つの大きな柱で事業展開を図っている。一つはゼロエミッションを目指した電動化技術でもう一つは-ゼロフェイタリティを目指した知能化である。それぞれの代表的な製品仕様はe-POWER、プロパイロットと呼ばれている。自動運転は来年には高速道路、2020年には市街地でも可能ではないかと予測している。電動車の方では1回の充電で400KM可能な情況。EVは普通の車だという意識でいる。そういう意志を込めてエンブレムを青くしていない。いろいろとんがった技術を搭載しているので興味のあるかたはこの後ご自宅の住所と電話番号をいただいて・・・。
ゼロエミッションとゼロフェイタリティ実現に向けてのパートナーシップとの連携も発表している。シームレス・オートノニマス・モビリティ(SAM)におけるNASAの技術を活用。無人運転車の実証実験におけるDeNAとの協同。マイクロソフトの「covtana(コルタナ)」との連携でパーソナルアシスタント技術を加速。ルノーとのアライアンスは特徴的に組み上げられており、主には研究・開発、購買、生産・物流、人事、品質、アフターセールスの機能統合をしている。この資料に情報システムが書いていないが、それはあたり前のことなので記載していない。車自体の共通モジュール化も進めていて、車のプラットフォームがあってコクピットがあって車体の前後方、エンジンがあってそれを着せ替えのように組み替えることで車を作れるようにしてきている。今後は三菱自動車とのアライアンスも加速していく予定。

日産のGlobal IS/ITの概要

サポートする人数12万人、PC12万台。ルノーも含むと20万台を同じPCで標準化している(少し自慢)。サーバー台数は4600ノード。Storage Capacityは5633TB。現在はもっと増えていて7PBくらい。リージョン別IT/ISのメンバー数はAMI:44、Europe:270、China:160、J/A&O:545、NA:339、LA27。ビジネスファンクション毎にそれを支えるアプリケーション部隊がいて後は管理屋さんがいてインフラ屋さんがいるという組織体系になっている。

日産の中期経営計画とGlobal IS/IT戦略

中期経営計画に合わせてIT/ISの中期戦略も作成している。始めて取り組んだのがFY05-10のBESTで、その後がFY11-16のVITESSE、FY17-がINNOVATEになる。それぞれ以下のように中計に対応している。FY05-07が日産バリューアップ、FY08-10が日産GT2012、FY-11-16がNISSAN POWER88でFY17-はPostNISSAN POWER88として近日発表となる予定。(新中期計画Nissan M.O.V.E. to 2022は2017年11月8日に発表)
BESTまでは戦略的取組は殆どできていなかったし、グローバルなんかわけのわからない状態から始めた。2000年当初は会社の再生が最大の命題でITはフルアウトソーシングによるコストダウンが主要戦略だった。その後会社の業績がV字回復、ビジネスの投資に便乗して情報システムもどんどん投資した。Global IS Center, Global Data centerを設立した。ここまでは必要な投資だったがそれ以外にもどかどか金を使って随分ベンダーさんを潤した時期だった。05-07日産バリューアップ08-16日産GT2012は会社再生後の更なる発展と価値創造を目指してBEST(Business Alignment、Enterprise Architecture、Selective sourcing、Technology Simplification)を展開した。BEST、VITESSEそれぞれに大きな転機があった。

BESTについて

BESTの取り組みのきっかけとなったのは2004年に実施したベンチマークだった。以下のような指摘を受け、カチンときた部分もあったがこれをうまく活用して我々の体質改善に取り組もうと考えられたのが良かったかと思う。その時のベンチマークは以下のとおり。
・複雑性がビジネスの成長を維持するITの可能性を妨げている。
・アプリケーションとインフラの複雑性によりアプリケーション管理コストが高い。
・ITプラットフォームの限定的な部分しか集中化されていない。またSLAが最低限しか
締結されていない。
・将来技術に対する投資が不十分。このベンチマークをきっかけにワールドクラスの
IS/ITを目指してBESTを構想して展開した。以下ファンクションについての解説となります。Business Alignmentはガバナンス、TCOによる可視化、ビジネスとの連携強化、グローバルガバナンス確立、Enterprise Architectureはグローバル標準でのシステム標準化、最適化。アプリケーションポートフォリオとEnd to Endビジネスプロセスを作成した。アプリケーションポートフォリオとはビジネス重要性(BC)、運用コスト(RTB)、テクニカルクオリティ(TQ)、ファンクショナルクオリティ(FQ)の4項目でアプリケーションを評価した。3000のアプリケーションの分析を実施した。End2Endビジネスプロセスでカーメーカーの汎用ビジネスプロセスモデルの作成しシステム開発時のスコーピング効率化とプロセス比較の容易化を図った。
Selective Sourcingでは戦略的選択的なソーシングを目指しアウトタスキングモデルへの移行とサービスタワーとパネルベンダー確立とオフショア開発の活用を推進。サービスタワーとパネルベンダー確立ではマルチベンダー環境をCross Functional Teamがコントロールする。
・システム開発はパネルベンダーを優先することでベンダー選定、システム開発のスピー
ドアップを実現。
・Technology Simplificationではテクノロジープラットフォームの標準化
・共通化を目指し4つのテクノロジーエリアに別に統合、共用、効率化を推進しました。4つのテクノロジーエリアは以下の通りです。Server & Storage、Mainframe、End User Computing、Telecommunication
BESTの効果は以下の通り
実施済みプロジェクト4131、プロジェクト遂行による総利益230,437M-JPY 削減したアプリケーション数△404Apps、Standard IT Ratio 80%、Cost per User 1.09→0.63Myen。

BEST期間中に訪れた転機

2000年~10年のフルアウトソーシングをしていたが、2007年ころからマルチソーシングを考え始めた。1年くらいセレクションにかかるだろう、トランジションするのに1年かかるとか考えるとそろそろ決断しないと間に合わない時期だった。社内でもいろいろな意見があったが、半分悪乗りのようなところもあり、こんな機会は今しかないということで当時のCIO(有名な行徳さんですけど)にフルアウトソーシングをやめてマルチソーシングに変えたいんですけどと言いに行ったら、そんなこと2年前から考えていたとあっさり言われた。
2008年にフレームワーク、どういう風にRFPに盛り込むかを考えたのが2009年。Business Process Transformation  Workforce Transformation  Outsourcing Transformationの3つのトランスフォーメーションチームを作って取り組んだ。

Business Process
フルアウトソーシングしていたのでそもそも自動車会社のシステム部門って何をしなければならないんだっけというところから入らなければならなかった。
1. 内部プロセス把握 COBITベースで現状プロセスを棚卸し。
2. 優先度設定 高いものはIT成熟度3へ持っていく。

Workforce Transformation
一体俺たちできんだっけ?ということからこれを検討。
1.タスク機能・スキル定義
・IPAのUISSベースで定義した。
・各タスクと要求レベル定義を作成。
2. キャリアワークフレーム設定
ロール定義とロール毎のスキルレベル設定。
3. 能力開発計画策定
・教育計画の策定。
・ロールに応じたキャリアパスの設定。
4.IS人材マップの作成。
・スキルサーベイの実施。
・個人別スキルアップ計画の策定と実施。

Outsourcing Transformation
1. アウトソーシングをビジネスドメイン及びテクノロジータワーをベースに実施した。
2. SOWとSLAを整備した。
2011年3月に至るまで進捗はよくなかったが大震災でトランジションが加速度的に進む。こんなことでコンフリクト起こしている場合じゃないと各パートナー・ベンダーが考え改革が進んだ。最終3週間でほぼ目標達成できた。

VITESSE

VITESSEとはVALUE INNOVATION、TECHNOLOGY SIMPLICATION、SERVICE EXCELLENCEの頭文字をとったキャッチフレーズである。
サービスガバナンス アライアンス 新技術がキーワードです。

VALUE INNOVATIONは以下7項目
1. One PLM
これまではアドホックに必要に応じて連携していたものをルノー・日産のPLM統合を実施。
2. Cost Management/Model Profitability
車のモデル単位での収益管理は非常にわかりにくかった。新しいモデルを作る為にかかるコストと設計変更によるコストの増減を把握できるように。
3. Business Expansion
VITESSE期間中に20ラインを新たに作った。業務システムのモジュール化パッケージ化によりにより拠点立上げの短期間化を実現。
4.Overall Opinion Improvement Design
カスタマージャーニーということでお客様とのコミュニケーションをグローバルで管理できるように。デザイン分野にもシステム部門が協力するようになった。
5.Revenue Management
グローバル標準のビッグデータプラットフォームの活用により、マーケティングパフ
ォーマンスを向上。
6.Enhancing Quality
品質に関する一連の活動を統合的に管理。品質及び顧客満足度の向上に大きく貢献。
7.Support Function Global Standardization
グローバル全従業員を対象とした業務標準化により、業務効率の向上とコスト競争力
の強化を実現。

TECHNOLOGY SIMPLICATIONは以下の2項目
グローバルでのアプリ・IT共通化によるコスト抑制品質向上と、アライアンスレベルでのさらなる共通化に向けた環境整備。
8.Application Convergence
9.IT Consolidation

SERVICE EXCELLENCEは以下の2項目
キャプティブセンターの活用およびグローバルIS/ITの内部改革により、サービスの質・スピード・生産性を向上。
10.RNTBCI(ルノー・日産のキャプティブセンター)Utilization
11.Global System Lifecycle Management

VITESSE Programの成果
# of Go project 1251projectで2406億円のReturn。プロジェクトの数がかなり少なくなったのは、いままで細々としていたプロジェクトを統合したり、グローバルプロジェクト化したりしたため。
一つ自慢させてもらうと攻めのIT銘柄として3年連続選定された。
日産自動車、グローバル人事システムに「Workday HCM」システム導入、「Microsoft Azure」を車両のテレマティクスシステム基盤に採用し、CADをVDIで動かしたこと、日産自動車、HPE、Siemens、自動車業界初となる本格的なグローバル利用での次世代設計基盤を構築。等が評価されたがこれが一番評価されたと思うのが「Global IS Annual Reportをユーザーとパートナー向けに配布したことだと思う。

VITESSE期間中に訪れた転機

Nissan Research CenterをSilicon Valleyに設立。ユニークなエコシステムを活用しつつ、クロスファンクショナルに協業・共創を行う。
2011-2012マウンテンビューから2013-2017サニーベルに移転。情報システム部門も人を送り込んだ。シリコンバレーの情況をキャッチアップした。
Autonomous Vehicle、Connected Services、Design、Global IS/ITのチームがコラボレーションしながら活動。
一方でデジタルディスラプターが続々登場して既存ビジネスを破壊していった。車会社ものんびりしてられない時代に。
TAXIはUBER/Lyft、HOTELはAirBnB、MUSICはSpotify、RETAILはAmazon、VEHICLEはTesla/Waymo、TV&MOVIEはNetflixといった例がある。
シリコンバレーではアドホックなネットワークが重要。業界はまったく関係なくアメーバ的なコミュニティが形成される。それをはじめて考えたのがASAPプログラムである。
Agile Startup Acceleration Program(ASAP)をつくりシリコンバレーのグローバルチーム主導でビジネスニーズにマッチしたデジタルソリューションのスカウティング・リサーチ・POCを促進する枠組みを開始。

Global IS/IT戦略「INNOVATE」

I nnovation  Agility Technology Excellence頭文字からとったキャッチフレーズである。革新性、俊敏性、データドリブンが大きなキーワードです。

ビジネス価値の最大化を目指したInnovationはCustomer Engagement、Monozukuri、Enhancing Quality、Operational Efficiencyの4つのファンクションからなる。

それぞれのファンクションは以下の要素に細分されています。

Customer EngagementはPre-Sales、sales、after-Salesのお客様接点プロセスをカバーしており以下4つの要素から構成。Digital Customer Experience、M&S Data Analytics、Sales Finance2021(自動車販売金融フィールドを新たなビジネスチャンスととらえて強化していく)、After Sales Digitalization(アフターセールスでのマネタイズを強化すること考える)。

MonozukuriはPlanning(商品企画)からStyling、Product Design、Production Preparation、Mass Production(大量生産)までのプロセスをカバーしそれぞれに以下の施策を実施。

E2E Digital Product Planning, Digital Design ReviewはVR・ARを使ってデザインをやっている、さっきのASAPの成果でもある, Digital Product Lifecycle ManagementはPDMを軸に製品情報の集約, MFG Digital Factory工場全体をデジタル化してしまってバーチャルに車の生産工程をエージェントする, SCMのデジタル化を進めることによって分かり易くダッシュボード化する。

Enhancing Quality
車に問題が起きたことをできるだけ早く検知する全国にあるディーラーの1店舗で起きた問題をいち早く検知して原因究明する。そのことにより車の品質向上に貢献する。原因が製品による問題であるときはディーラーに補償をしなければいけないし、部品にある場合はサプライヤーにフィードバックをかける。
Incident、Dealer Visit、Diagnosis、Pre-Application、Repair、Claim Application、DeliveryでGlobal integrated claim validation Flowを構成している。

Operational Efficiency(バックオフィス機能の統一化)
プロセスの簡素化、データの正確性とトレーサビリティの強化、分析能力の向上、業務生産性の強化、意思決定の加速化のFunctionをEnd-to-Endコスト管理の簡素化(Excelでチマチマやっている仕事をオートメーション化して生産性を向上)、ファイナンスモダナイゼーション(ファイナンスシステムの統合をかける)、購買ソリューションのアライアンス強化、HRプロセスの最適化(Workdayを中心にタレント分析をAIで)というKey Initiativesで推進し各Business Value実現を目指す。

●Agilityに関してはAgile開発促進と Agile Startup Acceleration Programの推進が特徴。Agile開発に関しては推進目標としてアジャイル開発割合を6%から70%にすること。Application Portfolio Optimizationとしてはアプリ数に関しては500削減すること。Improve Service Deliveryとしてはサービス品質を上げていくこととプロジェクトマネジメント強化は引続き継続的に実施していく。

●Technology Excellence
BEST・VITESSEでも実施してきたTechnologyの強化を当たり前にやって行く、更に載せて行こうというこというのがNISSAN Digital Technology Platformである。BigDataとIotの機能、Cloud利用の促進、セキュリティの強化のサポート機能によって我々の持っている車自体のクローズデータや社内にある現場開示データ、SNS等の社外情報をDigital Technology Platformで巻取り分析をかけることで先ほど言ったいろんなイノベーション活動に貢献する一方でEnd Userにバリューを提供していく。

●KPI説明
○Innovation
・Value Achievement Ratio  90%
○Agility
・Satisfaction Ratio
Executive Satisfaction Ratio 85%→88%
End User Satisfaction Ratio 83%→86%
・Big Project QCT Achievement Ratio 85%→90%
・Agile Project Ratio         6% →70%
○Technology Ratio
・Cloud Adoption Ratio    15%→50%
・# of Application Reduction      ▼500

質疑応答

Q.ゴーン氏をはじめとする経営陣の評価はどうでしたか?
A.BESTの取組はゴーンさんの支援・サポートがあった。セレソさんに対して頑張れ今が最悪だから思いっきりやれとの言葉があった。
システムの重要さを理解していた。システムに関するセンシビティが凄く高い、使い勝手が悪いと文句言うし、お金をかけすぎると文句を言う。結果は褒めてくれている。厚木には3回来てくれた。情報システムの全員集めて思いを伝え、よくやってくれたと褒めてくれた。あれだけ世界を飛び回っている人が厚木の山奥によく来ましたね(田口)。多分テクニカルセンターに来たついでだと思いますが・・・

Q.ほとんどアジャイルに持っていくのは困難ではないか?アジャイル開発できない3割を残したのは何故?
A.BESTもVITESSEも目標値を立てて評価してきた。じゃあその目標値をどのようにして立てているかというとアジャイル50%くらいいけるだろうと言ったが行徳が少ないだろうと言ったので70%にしたというのが経緯でして。実は後からついてくるものです。それでは何故30%残したかというとグローバルな超大型な開発は無理だろうそれをはずせば7割くらいだろうという数字です。3年後ごめんなさいと言っているかできましたと言っているか?目標を高くかかげてどうやるかを考えるのがポイントである。Pivotal labsを活用して手法を学び人財育成を行った。要するに新しいもの好きの動きの軽い会社なんですね(田口)。そうですねどうせやるなら思い切ってということでしょうかね。

Q.アウトソーシングの切り替え方針をどのように発信してどのように管理したか?
A.コミュニケーションが重要。新しいこういうプロセスになるよということをパッケージ化して数ヶ月に分けて7ヶ月かけて延べ700人に説明。グローバルにやる場合管理指標を置く。外人はまず数字で語る。数字を置いて始めることが重要。

Q:所有からシェアへ。どうやって差別化するか。IS/ITとしてどんな準備をしたか?
A:車をベースとしたサービス化が必要。車の上にのっかったサービスをマネタイズしていく。例えば走行履歴から保険料を算出するサービスなど。各社とも同じ様な取組をしながら色が出てサービスで差別化が図られる。一方、世界にはまだまだホワイトスペースがあり、そこには既存のビジネスオポチュニティーが存在する。VITESSE期間中に製造能力を上げたのはその意図もあると思う。極端に言うと新しいビジネスを最悪開拓できなくても車の製造専門会社になるのも一つの手だと思う。アップルやグーグルカーとか言っているが、車の製造ってソフトウェアやっていた人からすると利益効率が悪い。TESLA受注残を本当に作れるか。そこで作れなかったらうちで作ってあげましょうか?と言ってみようかな。

Q:スキルマップは陳腐化してしまったといういう話があったが、やった価値はあったか?全体像を描くのにコンサルは使ったか?
A:やって良かった。スキルマップはやめているがロールという概念は残っている。
スキルをアップするためのトレーニングコースも残っている。今はデータサイエンティ
ストやソリューションハンターなど、新たなロールが必要になってきており、スキルマップを組み直す時に来ている。
アウトソーシング切り替えの際は当初コンサル会社ににサポートをしてもらったが途中でやめた。
BESTは外部を入れていない。
VITESSEはコンサル会社に手伝ってもらった。
INNOVATEはコンサル会社を使っている。
コーポレートの中計を作っているところに参画しているコンサル会社に協力をお願いしている。ビジネス側の意向をキャッチアップしやすい。

Q:BESTはそんなにきれいにできたのか?
A:きれいの基準というのは難しい。政治的な力関係とかあって、変な地雷を踏まないようにしなければならない。アンオフィシャルな情報に気を配ることが重要。そういうところは行徳さんがうまかった。
ケイパビリティの問題もあり無理だよねということは見てみぬふりすることも。正解かどうかは別としても方向性は出来上がっているので時間をかければ目標に到達できる。
いろんなアイデアを進めて行く上で持久力が大事。瞬発力だけでなく。

Q.PCをよく統一できたなと思うのですが。
A:トップマネジメントはあまりシステムに興味なくリテラシーが低くトップからの変なプレッシャーはなかった。カルロスゴーンがMACだと言ったらMACだったと思う。
アライアンスを至上命題としてうまく活用した。我々は「ルノーのやつが言うから逆らえない」という言い訳をつかい、逆にルノーは「日産が言うから仕方ない」という言い訳をするといった手を使った。

Q:IoTでいろんな情報がいろんな場所から集まってくる。どのようにBig Dataに取り込んでいるか?
A.有用なデータをかき集める。Hadoopのプラットフォームを結構早い段階から導入。
餌がないと駄目。誰もが使いたい車のプローグデータである。これを真っ先にHadoop側に入れた。
データを入れるにも手間がかかる。抜き出すのも手間がかかる。使いやすい環境を作ることが重要。Hadoopの環境をセットアップしてそこに素敵なBIをくっつけた。データアナリティクスはその標準ツールを使いなさいとした。
それをを使う限りは余計な費用はとらないからと餌をまいて使わせるようにしたら、こういう分析もしたい、ああいう分析もしたいということでデータが自然と集まるようになった。

Q.人財に関して方向性を大きく変えた時にキャリアチェンジをさせたのか? フルアウトソーシングの教訓をどう生かしたのか?
A.アウトソーシング切り替えのときは各プロセスとそれに必要なスキルを世の中の教科書という教科書から引っ張ってきて定義した。こういうことをやるにはこういうスキルが必要なんだというセットアップを結構きっちりやった。スキルを定義してそれを習得するためのトレーニングを実践するという当たり前のことを当たり前にやった。
アウトソーシングの移行は複数のベンダーへのマルチソーシングと実施した。
結局サーバーは富士通、パソコン回りヘルプデスクがHP メインフレームは日立とIBM、アプリは日立とテックマヒンドラ、富士通。
全体管理としてのクロスファンクショナルはHPにお願いしたが、ベンダーが他のベンダーを管理するというのはできないというのがわかった。資料等は作ってもらっているが結果的には我々の方でうまくマネージしないとうまくいかない。

木内さん総評

さすがにやっちゃえ日産でしたね。グローバル企業にはグローバルもどき、インターナショナル、ドメスティックがある。私がいた建設業はインターナショナルではあるがまったくグローバルではない。グローバル企業らしい俯瞰した目でシステムが進化しているお話しを聞けてよかった。
・ビジョンを作ることが重要。結構ビジョンを作らないんですよね。Goalも設定しないで経営改革とか事業改革だと言っているところが多い。大きな組織ほどそうしないとベクトルが合わない。
・アジャイル6%から70%という目標は凄いんですが、そういう発想になったのもシリコンバレーのリサーチセンターが刺激となったと思う。
最近シリコンバレーモデルを導入する会社が増えてきた。ああいうモデルでなければこういう時代では駄目だと思う人が多くなってきている。あのGEですら同じモデルで大変革してきた。そういう先進のモデルを取り入れるのもさすがやっちゃえ日産ですね。
経営そのものも新しくアップデートかけていくところもやっちゃえ日産ですね。
車の流れは電動だと思う。あるメーカーさんは水素とか言っていて大丈夫なんかなと心配。先進的先取的な日産にイノベーターとして頑張って欲しいなと思いました。

江戸栄一(リコーITソリューションズ株式会社・BSIA運営委員)

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