BSIAシンポジウム2018レポート: 特別講演「RIZAP デジタル化の全貌」

RIZAP デジタル化の全貌

RIZAPグループ株式会社 取締役CTO 岡田 章二 氏

RIZAPは「結果にコミットする」をキャッチフレーズに自己投資産業、例えばボディメイク、ゴルフ、英語、料理などのスクールを展開している。会員数は約11万人、人口比でいうと0.1%にもなる。メインとなるボディメイク事業では、筋肉トレーニングだけでなく食生活指導も行い徹底して生活改善をサポートする。岡田氏曰く「会員の8~9割はダイエットが目的のお客様になる。いろいろ失敗された方が来るので失敗できない」そのために、テクノロジーを活用することで、お客様のサポートをより強固なものにしていくという。

急速な成長の中で求められるグループシナジー

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RIZAPグループは現在、自己投資産業の事業領域の拡大とバリューチェーンの拡大を軸にM&Aを進めていて、連結子会社78社、従業員7063名の規模となる。美容健康を核にアパレル、住関連、エンターテインメントなどのグループ会社がある。6期連続増収で2011年3月期には135億円だった売り上げを2018年3月期には1362億円に拡大、そして2019年3月期には2500億円を計画している。

岡田氏の役割はその拡大し続けているグループ戦略と事業基盤において、グループシナジーを生むための事業基盤プラットフォームとして各社に対してテクノロジー(ビッグデータ・AI/CRM/EC)、グローバルSPA(開発/調達/生産/物流)、RIZAP経済圏を支える顧客基盤、マーケティング等を横断的に低価格でサポートすることだ。
岡田氏は元々システムエンジニアとしてベンダー側にいたが、1993年にはファーストリテイリング入社ユーザー側としてシステムの活用に従事、2002年には執行役員CIOとなる。2016年にRIZAPグループに入社し、同社の取締役及びグループ5社の取締役となった。最近では優れたIT活用事例に贈賞する日経コンピュータ主催の「IT Japan Award 2018」において特別賞を受賞している。
RIZAPの事業基盤シナジーとは販売、投資、経営、生産において効率化と共有化、そして一体化を図っていくものだ。そこで事業基盤への積極投資分野として、デジタル化(デジタライゼーション)、プラットフォームイノベーション、グループ/グローバル経営を挙げている。
デジタル化分野ではお客様の記録のデータベース化をはじめ、なりたい体へのシミュレーション、ウェアラブル、スマートゴルフスコア管理、チャットサービス、CRM/SFA、AIによるトレーニングや食事のパーソナライズドリコメンデーション、AI学習による学習プログラムの作成等のトレーナーの補助などが挙げられるが、まずRIZAPのデジタル化をどんどん進めるという。
プラットフォームイノベーション分野では共通基盤の構築、CRM、SFA、物流、EC、出店組織、購買機能、IT組織、コールセンターなどグループ内で重複しているものの共通化を進める。例えばジーンズメイトでは裏通りの安い家賃の場所に店舗を展開しチラシによる集客を行ってきた。しかし、時代の変化により昔は安かった家賃も実際には割高だったことが発覚したりした。出店組織の共通化にこのような事態は防げる。
グループ/グローバル経営分野ではマネジメント・ダッシュボードを用いて業種ごとのKPIを設定し、日次、週次、月次で状況を把握、人材やグループ会計も一元化できるようにする。

経営の数字を変えるためのさまざまな取り組み

このような積極的な展開を見せるRIZAPだが、岡田氏が入るまでシステム部はなかったという。そこでばらばらのシステムからITインフラを刷新し、RIZAPのボディメイク事業において重要なボディナビゲータ、オンライン予約、通販基盤刷新、店舗と本部のコミュニケーション、eラーニング、Wi-Fi強化などさまざまな取り組みを行ってきた。それにより「経営の数字をいかに変えるかが重要」と岡田氏は話す。
例えばボディナビゲータの刷新により契約率は15%向上した。オンライン予約の導入では来店率が20%上昇、電話だとキャンセルの連絡だけで終わってしまうがオンラインで再予約してもらうことで、トレーナー稼働率も上昇した。このような成果を上げるために目標はあらかじめ設定し、毎月KPIを追いかけているという。
気になる今期の取り組みとしては、RIZAPゴルフのレッスンシステムスコア管理やビッグデータ分析強化、カウンセリングの高度化、食事サポート効率化・寄り添い強化のための会員アプリの強化、グループ共通の物流基盤の統合など「RIZAP×Technology」をキーワードに進めていく。

このような短期での大きな改革を実現してきた岡田氏だが、「成長のためにはリミッターを外して業務に臨むべき」という言葉通り、まずは実態理解のために現場で100人インタビューを実施したり、実際のサービスを体験したりした。そのうえで経営課題を明確化して、プロジェクト化、上手く行っていないサービスを廃止し、改革の組織を作るためのビジョンを作成、共感してくれる人材を集め組織化した。事業会社に携わることで事業部門の近くで、システム部門も経営数字に責任をもって、直接的に経営課題の解決に取り組んでいくことが重要だという。効率化のための投資判断をせず、業績改善計画による投資判断・業績数値の変化により評価することをポリシーとし、今後も「結果にコミットする」というRIZAPのコンセプトを社内でも進め、顧客に還元していく。

田口雅美(BSIA運営委員・株式会社キテラス)

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