青果流通の特殊性
株式会社ファーマインド 代表取締役社長 堀内達生氏
有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所 當仲寛哲氏
青果特有のシステム化の難しさ
「青果の常識はシステムの非常識。労働集約型な産業だ」
と株式会社ファーマインドの代表取締役社長 堀内達生氏は語った。
ファーマインド(フレッシュシステム)は、生産者と消費者をつなぎ続けることが創業の目的だった。日本の青果の流通は北米とは環境があまりに違う。カリフォルニアのレタスの生産は4社のみ。しかし、日本は何社レタスを生産しているか数え切れない。
そして、日本国内の小売りは寡占化すると堀内氏は信じていたが分散化が進んでいるという。そこも北米とは異なるところだ。店舗数は少子高齢化にも関わらず、増加しており、CVSやドラッグストアも食品を売るようになり、Amazonなどの参入もある。
例えばエビアン、アサヒ・スーパードライといった加工品は生産者と消費者がブランドでつながっているが、青果は個体ごとに重量が異なる不定貫の商品となる。例えばバナナは生産地でできたものと消費者が手にするものは売る場所でも異なり、時間においても変化する。また、消費者の手に渡るときの形態も流通段階で手が加わり、異なる形になる。
ファーマインドは適温で全国を網羅する物流網でいいものを良い状態のまま届けることができるコールドチェーンネットワークをもつ。小売店の社数は増えたが会社によって求められる加工や量などの調達、製造加工、配送のパターンが異なる。例えば野菜をいくつ袋に詰めるのか、どうパッケージするのか、出荷までの短時間の中にいろいろな作業を行うため、その工程は複雑で管理が非常に難しい。1000の小売に対して、1000の言語があるようなものだ。
そして、青果は在庫が持てない。天候の変化があれば、生産も影響を受けるし、天候により発注も予測がつかない。ダイレクトな影響を度々受けるという不確定要素が極端に多いのが特徴だ。
そのため、青果の流通は非常に複雑な体系となり、情報のシステム化による一元管理も困難だった。
「生産者がどういう思いを持って作っているか、伝言ゲームで内容も変わるし、商品も変化していく。双方を繋げなければ、消費者は高いものを買うことになるし、生産者は安く売らなければならない。そして、農産物は豊作貧乏。出来過ぎると暴落が起きる。そのため適正配荷する必要がある。そのため、人とシステムがコラボレーションし、人の経験による予測の精度、仮説の精度は上げ、それをシステムに反映することで、青果業界にマッチする基幹システムが必要だった」
青果流通の課題は世界で共通
そのような非常に難しい基幹システムをどう作るか。システム開発を担当した有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所 當仲氏は現場を見て驚いたという。
「商品が均質でない、供給量が安定しない、在庫できる期間が短いのが難しさの要因でシステム導入前は人間とエクセルを使い倒して、業務を回していた。荷廻という需給調整を行っていて、その場で仕入、移動、加工、引当を調整するする作業だが、これを1日5回やる。つまり計画が1日5回変わる。人が行っていたこの作業をシステム化するためには、一つの言語にならないことを前提にして、マスター管理を行ったうえで、在庫管理、不定貫対応、原価管理などの必要な機能を使えるようにしなければならなかった」
そのためシステム構築方式は、アジャイル方式でかつデータベースを使わない方式を取った。そして、ファーマインドとUSP研究所が一体となり、社内で核となるメンバーを育成しつつ、構築してきたという。當仲氏は、
「ユーザー側がしくみを理解しているため、システムにできる。システムをつくっているのはあくまでユーザーだ」
そして、青果流通における課題は世界で共通している。この仕組みを今度はグローバルに2社で展開していきたいと語った。
田口雅美(BSIA運営委員・株式会社キテラス)