第1回デジタル座談会
テーマ『IMDデジタル競争力2020 なぜ日本は27位なのか?』
ファシリテータより、背景及び議論の呼び水の説明
日本が特に遅れている項目
・知識における人材の国際経験
・デジタル技術のスキル
・企業の俊敏性
・ビッグデータの活用
上記4点の中から、今回は「企業の俊敏性(Business Agility)」を取り上げる。
また、企業の俊敏性を阻害するであろう要因について、日経新聞の記事より下記を引用。
日本が低迷する理由。
・「継続する仕組み」 変えないことは問題にせず、変えることには理由を問う体質
・「作り込む習性」 自社業務を細部までカスタマイズして複雑化する。結果、変化しにくい体質に。
・「暗黙知のカルチャー」 勘と経験に優れた人材を尊重。世界標準のフレームワーク(PMBOKなど)の適用が進まない。
ここまで見てきた中で、企業の俊敏性を阻害するのは、変化できない日本の体質なのかもしれない。
ここを出発点としてディスカッションはスタートした。
ディスカッション・スタート
日本人の性格について
・新しさより前例の有無を重要視する日本の文化は問題ですね。
・Hofstedes による国家の文化性の研究があります。つまり、国の性格のようなもの。この研究によると、日本という国の性格はなんといっても「リスク回避」だそうです・・・。
・あと、「やたらに作り込む」「細かくする」傾向もあるね。
・日本には、「テクニシャン」はいるが、「エンジニア」はいないと言われるゆえんですね。
・それは、「システム思考」がない、ということに通じる?
・そうだと思います。「システム思考」または「デザイン思考」が欠如している・・・
・そういえば、デザイン(design)という言葉は、サイン(sign)を消す(de)という意味らしい。誰かが作ったさいサインを消してまっさらにして作り出すこと、これがデザイン。
教育について
・やはり問題なのは教育でしょうか?
・そう思いますね。教育システム、教師、いろいろ問題がありそうです。
・小学生のなりたい職業ナンバー1が「サラリーマン」らしいですが・・・。
・まぁ。これは在宅ワークの影響もありそう。
・私は、コンパスやミートアップなどの勉強会にいくつか参加していますが、そこには若手も多く、盛り上がっていますよ。
・それはいい傾向ですね。
・ただし、日本は他国に比べて圧倒的に自己学習が少ない、という統計もありますが。
・ミートアップなどに参加して自己学習をしていると、会社で揶揄されることはあります。いわゆる「意識高い系?」というような言われ方。これは、ミートアップ参加者の多くが経験しているようです。
・「専業禁止」という書籍があります。これは、会社に勤めて、必ず副業をしなければならないという会社の事例です。
・自己学習が進まないなら、それを制度化してしまおうという取り組みですね。
変化と学習について
・そもそも、日本は歴史的に海外から様々なものを学んできました。大陸から仏教が伝来した後、遣唐使を派遣する精神があった。明治時代もしかり戦後もしかり。海外から常に学んで来たはずですね。
・やはり、それは大きな刺激により変化せざるを得ない状況だったんでしょう。
・ということは、今の日本は大きな内的・外的な刺激を必要とし、それにより既存の社会や企業が壊れる必要があるんですかね?
・そうだと思います。
・そもそも、海外では「企業は存続するもの」という感覚はなく、個人も然り。だから変化は日常なんですね。
・やはり、日本は失敗を恐れます。
・「絶対失敗しない、他社がやっていない事例」を持ってこい、といわれたこともあります。
・それは、もう事例でもないですね・・・
マネージメントについて
・変えられないなら、日本人の職人技を活かす方法論は考えられますか?
・職人を活かすも殺すもマネージメント次第でしょうね。
・企業、組織内でマネージャーをいかに育てるかが重要です。
・リーダシップは座学では学べないものですからね。
・優秀なリーダーを評価するスキルが、そもそも組織になかったりします。
・マネージャーに求められるスキルは、2つあると思っています。それは、「プロマネのスキル」と「カウンセリングのスキル」
・特に後者が重要と感じています。
・ところで、日本のプロジェクト会議って「話す人が決まっている」んですか?
・そうですね。
・いまだに?
・もちろん、企業によりますが多くの場合、決まっていますね。。。
・海外から優秀なマネージャーを大量に連れてくる必要がありそうですね。
俊敏性について
・もう1点、日本の特徴は多様性の無さ。これは島国~鎖国という地理的・歴史的な部分も関係してますね。
・企業内、組織内で価値観が一緒なんですね。
・ジェンダーギャップの国際評価も日本はかなり低いです。
・今回のテーマの「俊敏性(Agility)」は、多様性が大前提。
・プロジェクト失敗の割合、約50%とよく言われます。
・しかも、過去から変わっていません。つまり、反省をしていない。
・海外でも、過去においてはプロジェクトの失敗は同じくらいの50%もありました。
・だが、海外ではそれを反省して変化した。
・具体的にはアジャイル開発方式の導入ですね。
・現在、アメリカでは99%、アジャイルといっていいでしょう。
・海外でアジャイルにシフトしたのと同時に、スタンディッシュはプロジェクトの評価基準を変えましたね。
・2013年に、Value(価値)を評価基準に追加しました。
・日本は、いまだにQCD中心の評価基準が多いようです。
以上、議論は、誰かの意見を受けて、また新しい展開があるというように、拡散気味ではありますが、参加者全員で盛り上がる、あっという間の2時間でした。
(ファシリテータ 熊野憲辰)