第90回例会報告:飯島 淳一 氏、池上 遥香 氏「我が国におけるディジタルレディネスの現状分析」

第90回例会報告

我が国におけるディジタルレディネスの現状分析
ー定量的及び定性的調査にもとづいてー

4月例会

2019年4月例会は「我が国におけるディジタルレディネスの現状分析 ー定量的及び定性的調査にもとづいてー」と題し、東京工業大学の飯島 淳一教授と飯島研究室に所属している池上 遥香さんにご講演をいただきました。
本講演では、2018年末に飯島教授と池上さんが行った、我が国におけるディジタルレディネスに関する定量的および定性的調査の結果についてご報告頂きました。また、現在開発されているDX評価および改善提案のパッケージについてもご紹介いただきました。

◆内容

1.ディジタル変革

2.「企業のディジタル・レディネス調査」

3.ディジタル・レディネス・アクセレータの説明と今後の開発予定

 

1.ディジタル変革

ディジタル変革とは「瞬時に、障害なく、抜けなく、世界中の人々や至る所にある機器を「繋げる」ことと定義した。その中で重要なキーワードは「繋げる」ことである。そして、現在から将来への変化を念頭に置きながら、ディジタル技術とその社会へのインパクトが引き起こす変化や機会を、戦略的かつ優先順位付けされた方法で十分に活かし、企業活動、業務プロセス、コンピテンシー、ビジネスモデルの変革を、深化、加速化させることと考えている。ディジタル・レディネスとは、ディジタル変革を備えることのできる能力である。

IVI研究機関はIT活用によるビジネス価値向上とイノベーションを創出することを目的として、インテルとアイルランド国立メヌース大学が設立した機関であり日本企業や大学も参加している。

 

◆IVI研究所が開発したディジタル・レディネス評価のモデル

1.PMSOフレームワークとは、P:Plan、M:Make、S:Sell、O:Operateから構成されている。この4つの側面から評価を行うことになる。

2.ディジタル変革に必要な7つの組織行動マネジメント領域は以下の7つから構成されている。

1)計画策定と実行のマネジメント

2)エコシステムのマネジメント

3)デリバリーとオペレーションのマネジメント

4)能力開発と組織設計のマネジメント

5)投資と財務のマネジメント

6)情報を有効活用するマネジメント

7)リスク、コントロール、サイバーセキュリティのマネジメント

上記の7つの中からそれぞれ質問に回答することでどの部分を深掘りすべきかが明確になるフレームワークである。具体的に質問の内容としては、スコープとスケールの枠で導入をどれだけ行なっているか、どれほどの深さで積極的に使用しているかなどを質問している。回答した結果を分析すると3つの主な結果を見いだすことができる。

1.PMSO毎、全体のディジタル・レディネス・インデックスの算出とベンチマークの比較

2.スコープ(強さ)、スケール(広さ)によるアーチタイプの判定

3.深掘りすべき組織行動マネジメント領域の把握と、関連する重要実践活用力の同定

IT-CMFとは、IT活用の実践力を向上させる方法と訳されている。目的はビジネス価値向上に繋げるIT利活用フレームワークである。参加にはPMI、ITIL、COBIT、CMMIなどを全て取り巻く存在である。評価としては入門、初級、中級、上級、最適化の5段階となる。

 

2.「企業のディジタル・レディネス調査」

◆実態調査

日本企業の44社に調査を行ない以下の軸で評価を行なった

1)ディジタル化の深さと広がりの達成度

2)PMSOの4つの視点から評価した達成度

3)7つの組織行動マネジメント領域における取組度合いと、目標と現状のギャップ

◆分析結果(Web)

1.ディジタル投資割合は低く、まだ試験的に導入している段階である。つまり、ディジタル・トランスフォーメーションの域には達しておらず、改善レベルの段階であると判断できる。

2.殆どの日本企業はディジタル化への変化を認めたが行動していない段階であるが、一部の企業は何らかの活動を開始している。残念なことに、本格的な活動を実践している企業を見出すことはできなかった。

3.戦略的に計画する分野においては重要と認識しているが、リスク、コントロール、サイバーセキュリティに関しては既に取り組みが終了間近であると理解した。

統括すると日本、ヨーロッパ、米国の順に成熟度が高く、日本はディジタル化への認識があるが計画されていない企業が多くされていたとしても初期段階である。特に問題となる部分は計画実行と情報利活用である。

◆インタビュー調査結果

以下の3つが大きな課題となる。

1)グランドデザインを描けるリーダー人材の欠如

2)部署ごとにサイロ化されたミドルダウンマネジメント

3)複雑な組織構造による低い情報流動性

 

3.ディジタル・レディネス・アクセレータの説明と今後の開発予定

Excelで作成された計画策定と実行のマネジメントに関する質問に対する診断結果を表示するシステムである。今後の展開としては以下の2つを想定している。

1.組織能力と個人能力を開発する提案を行う。

2.計画策定と実行のマネジメント以外の6つの領域をカバーする。

 

今回発表して頂いた内容は客観的、論理的に比較をしながら、自社のポジショニングを明確に数値化して認識できるツールであると共に、強み、弱みを明確にして強化すべき部分を浮き彫りにして対策を講じることができるフレームワークである。自社の現状把握を一度測定してみたい企業にお勧めしたい。

 

坂本克也(BI-Style株式会社・BSIA運営委員)

ページ上部へ戻る