ビジネスシステムイニシアティブを全てのユーザー企業に!

IMG_20201001_124058B執筆者PROFILE
河﨑 幸徳
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ

ビジネスシステムイニシアティブを全てのユーザー企業に!

1. ビジネスシステムイニシアティブが求められる背景とは

BSIA(ビジネスシステムイニシアティブ協会)の会員企業の多くは首都圏の大企業が主ですが、大企業の事業者数は日本全体のたった0.3%、従業員数にいたっても30%弱を占めているのみです。
それもそのはず、ビジネスをシステム化して効率化や売上拡大を図るには相応の投資が必要であり、それに取り組む余力があったのは大企業だけだったと言っても過言ではありませんし、彼らを支えているSIerも首都圏に集中しているからです。
大企業は早くからシステム化に取り組んできましたが、その時々の技術や環境に応じて種々の経験を重ねてきました。1960年代に大型コンピュータが商用化されたときには、造船・重工業や銀行等が自社内に専門部隊を組織化して導入、専門的な教育を受けた一部の専門家がシステム化に取り組みました。 それが1980年代のパソコン出現により裾野が拡大、自らプログラミングを習得して自分の仕事を効率化する輩も出現しました。(実は私もその一人です)
更にはPCサーバーとLANを組み合わせたオープンシステムが登場、部門内の部分最適による分散システム化が浸透する等、ホストコンピュータによる集中処理からクライアント・サーバーシステムによる分散処理へと変化していきました。
こういった流れの中、技術やスキルが多様化し、餅は餅屋に任せた方が良いとの理由で、運用のみならず開発や企画、更にはIT戦略策定までもアウトソーシングする企業が増加したのが2000年頃からでした。 その結果、自社内のITスキルは空洞化し、ベンダーへの依存が増していきました。
この流れに待ったをかけ、ビジネスシステムをベンダーに丸投げするのではなく、自社がイニシアティブを取って主体的に取り組むこと、すなわち「ビジネスシステムイニシアティブ」を提唱し、啓蒙するために生まれた団体がBSIA(ビジネスシステムイニシアティブ協会)です。
その設立の主旨は、時代や環境が変わっても不変ですが、啓蒙する対象やアプローチ方法については変えてゆくべきではと、最近特に感じるようになりました。
その理由は、信じられないくらい急激に進むデジタル技術の進展です。

2.中小企業のIT化・デシタル化の現状と課題

従来IT化やデジタル化などは大企業が取り組むもので、中小企業は大企業の対応が落ち着き、普及期に入ってから適用を検討すれば良いと考えている経営者が大半だと思います。
なぜなら、IT化やデジタル化を進めるには一定の投資を伴うこと、その投資対効果が目に見えずよくわからないこと、更には投資するにも相談できる相手がいないこと等が 原因と考えられています。
ところが、技術の急激な進化により、デジタル化は企業の規模に関係なく取り組むべき経営課題となっているのに、世界的にみてもそれが遅れているのが日本の現状です。
クラウド技術の進展に伴い、IT化やデジタル化は投資してコンピュータを所有しなくても、クラウドサービスを活用して利用することが出来る時代となりました。
特にここ数年のクラウドを活用した各種システムサービスの拡充には目を見張るものがあり、業種に関係なく必要な、勤怠給与、財務会計、情報共有などの間接業務はクラウドサービスにより安価に提供されています。
更には受発注システムや在庫管理、工程管理、販売管理、CRM等々個別の業務システムもクラウドサービスが多数存在しています。
これらのシステムは投資することなく経費で利用でき、システム化のハードルが高かった中小企業や零細企業にとって利活用し易い環境が整ってきました。
なのに、そのような環境が出来ていることもなかなか周知されていないのが現状です。
国もIT導入補助金など支援制度も整備してIT化・デジタル化の支援を行っていますが、ITの専門家が不在、相談できる相手がいない、経営者自らが学ぶ機会が無い等の理由により、中小企業や零細企業、個人事業主のデジタル化は浸透していません。

3.では、どうすれば中小企業のIT化・デジタル化を上手く進められるか

企業の社内SEを経験した人は、「IT化やデジタル化は主体的に上手く適用すれば必ず効果を出せるはずである」、と確信していると思います。
すなわち、ITは上手く使えば、ユーザーも経営者もお客様もベンダーも、みんなハッピーに出来るものであるはずです。
なのに上手くいかなかった事例は過去に山ほどあり、その原因の大半はユーザーがイニシアティブを取って主体的に取り組まなかったことが原因だと思います。
だからこそ、大企業が経験してきた失敗や反省を中小企業にも理解してもらう機会を提供し、急激に変化する環境の中、最適なIT化やデジタル化を実現してゆくための支援が必要となります。
加えて、今般のコロナの影響により、取引先等からの圧力によりデジタル化を推進しなければならなくなっている企業も増加、特に、感染予防を目的としたテレワークの普及やWeb会議は、どの企業でも取り組まざるを得ない状況にあります。
そこで失敗しないIT化・デジタル化を実現していく上で実践できるのが、BSIAの活動で得た知見や知恵なのです。
BSIAの活動も、コロナ禍の影響でWeb上での活動となり、東京に出向かなくても有益な情報を得ることが出来るようになり、地方にとっては非常に都合が良い環境です。
このコロナ禍、全ての企業がテレワーク以外でもデジタル化による感染予防対策が求められている今、この機会を前向きに捉え、企業ユーザー自身が主体性を発揮して最適な情報システムを構築することが求められる時でもあります。
そのためには、企業規模に関係なく「ビジネスシステムイニシアティブ」の意義をきちんと理解して、その思想に基づいてIT化・デジタル化に取り組むことが大事となりますが、初めて取り組む中小企業に対しては、支援が必要となります。
その役割を果たせるのは、地域経済の活性化を担う我々地方銀行であり、県や市町村などの地方公共団体や、電力・ガス・交通等のインフラ企業と連携して進めることで相乗効果を図っていけると考えています。
その結果、時間はかかりますが、正しいIT化・デジタル化が中小企業に広がり、効率化や売上拡大に寄与し始めることで、地域が活性化し、更には日本全体が活性化してゆくものだと確信しています。

4.最後に

上記シナリオを実現していくためにもBSIAの活動を首都圏中心から全国に展開してゆくべきであると考えます。参加のハードルを低くして中小企業にも情報提供を図ると共に、中小企業のIT化・デジタル化を推進・支援する組織とも連携して「ビジネスシステムイニシアティブ」を啓蒙し、企業規模に関係なく先駆者の経験や有識者の知恵を共有して、全てのステークホルダーが満足できるIT化・デジタル化の普及を目指しましょう。
なぜなら日本の事業者の99.7%、従業員の70%は中小企業ですから。

(2020年10月26日)

ページ上部へ戻る