執筆者PROFILE
寺嶋一郎 TERRANET代表
「デジタル化」時代こそがIT部門の飛躍する時
デジタルという言葉が毎日のようにメディアを賑わせ、今、世の中は急速に「デジタル化」が進行している。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity (複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を重ねたVUCAという言葉に象徴される予測がつかない時代。そこにIoT、AI、ビッグデータ、ソーシャル、モバイル、3Dプリンタなどの新たなテクノロジーが同時多発で現れてきた。さらには、半導体の性能は指数関数的に向上するという「ムーアの法則」はまだ健在で、コンピュータのパワーがますます強力となったことがこの「デジタル化」の流れを支えている。
さて、この「デジタル化」の本質とは何なのだろうか、そしてIT部門はそれにどう立ち向かえば良いのだろうか。「デジタル化」にはいろいろな側面があるが、その中心にあるのは「ソフトウェア」である。クラウド技術の登場で、「ソフトウェア」だけで新たな巨大ビジネスを作ったり、ビジネスを大きく革新したりできるようになった。UberやAirbnbなども、クラウド上の「ソフトウェア」である。斬新なアイディアさえあれば、それを「ソフトウェア」にして新たなビッグ・ビジネスを起こすことができるのだ。
例えば家の電気機器がIoTでクラウドに繋がるとしよう。クラウド上の「ソフトウェア」で、それらの電気機器をモニタリングをしながら自由自在に動かせるのだ。スマホから音声で電気をつけたり消したり、家に帰ったら自動的に好きな音楽を流したりすることもできる。まさにどんな「アイディア」でどういった「ソフトウェア」を作るのかが、今後の勝負となる。
デジタル時代の「アイディア」にはITの素養やセンスが必要であろうし、「ソフトウェア」はまさにITの中核に位置する。これまで日の当たらなかったIT部門がいよいよ主役になる時代が来たのだ。ただ、ここでいう「ソフトウェア」は、旧来のそれとは異なる。例えばeコマースのためのWebサイトは、ビジネスの要請をいち早く反映し、日々、改善していかなければならない。スピードが命で、請負型のSIベンダーに頼み開発できるものではない。優秀なプログラマーが内製にて、アジャイルに開発し、DevOpsの形をとり維持されていくものだ。
今後のSoE(System of
Engagement)とか「攻めのIT」とか言われる領域のソフトは、従来のウォータフォール型ではなく、新たなスタイルで構築される。アジャイルとかDevOpsの源流にはTPS(トヨタ生産システム)の考え方があり、もともと日本のやり方なのだ。顧客を巻き込みチーム一丸となって改善を繰り返す開発スタイルである。それでこそ、女工哀史のようなソフトウェア工場のひとつの歯車として悪戦苦闘するプログラマーも開放され、大きく羽ばたくことができる。
「デジタル化」を他人ごとではなく、自分ごととしてしっかりと捉えよう。IT部門はそれに対して、しっかりと準備をしょうではないか。もっともっと勉強も必要だ。超上流のBABOKや、新たな開発スタイルやツールなどを学び果敢にチャレンジして欲しい。再度言おう。今こそが、IT部門の飛躍のチャンスである。このBSIAでも、チャレンジするIT部門に学び、お互いに切磋琢磨できる場を提供していきたい。