第65回例会報告:神戸大学・松田卓也名誉教授 「迫り来るシンギュラリティと人類の未来」

第65回例会報告

講師は、神戸大学名誉教授の松田卓也先生。

シンギュラリティとは、全人類を合わせた以上の知的能力を持つ存在、超知能が出現する事象とか時点である。シンギュラリティに達すると、科学技術の爆発的な発展が起きて人類史が大きく変わる。農業の出現に匹敵する大事件である。それがここ数十年で起きるというのだ。シンギュラリティ後の人間社会がユートピアになるかディストピアになるかは、技術の問題ではなく、政治的、経済的、社会的な問題である。

P1050946_2

 icon-check-square-o シンギュラリティとは,どのような世界か?

人類は現在,“爆発”の寸前である。その爆発がシンギュラリティ(技術的特異点)であり,2045年であると予想されている。シンギュラリティ後の世界がどのようになるか,その予想は様々だ。カーツワイル氏はコンピュータ上に人間の精神が転送される(マインドアップロード)と予想する。松田氏は,超知能が科学技術爆発を起こすだろうと予測する。
また,今後のAIの進化についてもいくつかの立場があるようだ。一つは,AIが“意識”を持つという強いAI。これは, いわゆるハリウッド的世界観ということができる。対して弱いAIという解釈は,AIはあくまで意識は持たない。この場合は,人類が機械に支配されることはないだろう。
2045年(遅くともだ)だと予想されているシンギュラリティの前に,プレシンギュラリティが2029年ころに到来するという予測もある。これは,AIがチューリングテストにパスをする,または汎用人工知能の実現ということだ。

 icon-check-square-o 人類史の3つの転換点

人類の歴史には,大きな転換期があった。最初は約1万年前の農業革命と言えるものだ。これにより,穀物を備蓄することができ,都市~社会が出来上がった。しかし,農業革命は,その生産量と人口が線形だという特徴がある。つまり,農業生産量が上がると,人口は増える。減ると人口も減るということ。つまり,一人当たりの“食い扶持”は一定ということだ。次に,工業革命(産業革命)が250年前に起こった。この革命に乗ったか,そうでないかで世界は大分岐を起こした。また,工業革命の本質は機械化なので,人間一人当たりの所得が増え,人口が増加した。
そして,次の大革命がシンギュラリティ。これに乗るか否かで第2の大分岐が起こるだろうと井上智洋博は予想する。そして,その第2の大分岐に日本がどちらに乗るかが重要になる。
さて,よく議論される内容であるが,シンギュラリティ後の世界では,人間は働く必要がなくなりユートピアとなるのだろうか?それともハリウッド的なディストピアとなるのだろうか?
カーツワイル氏は,あらゆる問題を超知能が解決しユートピアとなると予想し,ホーキング氏,ビルゲイツ氏,などは,人類は滅亡か隷属状態となると予想している。
これはまだわからない。現実的には,超知能と人類が共存し,さらに人間は超人間となる世界を目指すことがいいだろう。

 icon-check-square-o 日本の今後

日本は少子高齢化のため,生産年齢人口割合が減少し貧しくなるだろう。そして,この減少率は世界で最も早い。つまり,最速で貧しくなると予想される。このままだと,2030年頃には,経済的破局を向かえているかもしれない。それは,戦後または明治時代の初期のような状態かもしれない。この未来を「ちゃぶ台返し」すること,これがAI化,ロボット化の推進ということになる。

 icon-check-square-o スーパーコンピュータの現在~未来

中国の躍進が目覚ましい。人,物,金,技術,全てにおいて中国が日本を上回る。中国一強時代ともいえるかもしれない。
これに対抗する一人の日本人がいる。齊藤元章氏だ。齊藤氏は,自腹でスパコンを自作している。Green500(世界で最もエネルギー消費効率の良いスーパーコンピュータのランク付け)で,中国を進撃しトップに並んでいる。これからは,中国対齊藤氏の戦いとなるだろう。

 icon-check-square-o AIへの各国の投資規模

日本の投資規模は,国家レベル,民間レベルともに,米国,中国にたいしてはるかに及ばない状況である。
シンギュラリティの未来は,この投資規模と天才的人材で決まる。世界の運命を決めるといっていいだろう。しかし,日本の現在の投資レベルでは,敗北は必至の状況だ。

 icon-check-square-o 超知能

超知能には,人間の脳を模倣する方法,深層学習,古典的人工知能研究などのアプローチがある。その中で,大脳新皮質のアルゴリズムが分かれば,汎用的AIが誕生するだろう。
齊藤元章氏は,脳型コンピュータも目指している。これは,1000億コアを持ち,2020~2025年に,6リットルの体積に,73億人の知識を詰め込むことを目標にしている。これが,実現できれば,日本からシンギュラリティが発現するかもしれない。まさに,「ちゃぶ台返し」であり,日本が第2の大分岐において勝利できるということだ。

脳を模倣したアーキテクチャにも,2つの立場がある。それは,全脳型アーキテクチャと大脳新皮質アーキテクチャだ。前者は,意識を持つ。だからAI脅威論に繋がるだろう。後者は,意識を持たない。意思は人間側が持つというものだ。まずは,後者を目指すことが得策だろう。
また,人間の知能空間と機械の知能空間は,重なる部分とそうでない部分がある。人間だけが持つ知能空間は,非合理性がある。もちろん機械にはない。そして,人間の知能空間は,人間の脳がこれ以上大きくならないと広がらない。(これ以上頭が大きくなると,産道を通らなくなり,子供を産めなくなる)しかし,クラウド上に展開される超知能の空間は,いくらでも広がっていくだろう。
松田氏の考える,超知能のロードマップは以下となる。
まず,マシンは齊藤元章氏のものとなる。齊藤氏のマシンは,2017年,つまり今年中に180P(ペタ)FLOPSを実現し,人間の小脳を実時間でシミュレーションする予定だ。(猫の小脳については実現済)そして,2019年には1000PFLOPSで人間の大脳をシミュレート,2025年には1000コア・100兆インターコネクトで脳型マシン(NSPU),2025年には自然言語処理,2029年に汎用人工知能が可能になるという。
同時に,マスタアルゴリズムを開発し,大脳皮質をクラウド化する。そして,超人間は,人間+クラウド上の大脳新皮質マシン,ということになる。
それは,人間の視覚,聴覚,触覚がクラウドとインターフェース持つ。視覚野では,眼前に様々な情報が表示される。触覚もシミレーションされるだろう。そして,運動野については,パワードスーツのようなものから,思念で機械が動いたり,楽器を演奏することができるようになるだろう。

 icon-check-square-o 質疑応答

・CPUの処理速度は,発熱の問題もあり限界にきているのではないか?
・齊藤元章氏のインターコネクトは,三次元積層技術というもので,これは発熱がかなり小さい。ここから,新たにムーアの法則が適用されるだろう。

ページ上部へ戻る