第60回例会報告:武田薬品工業「Global One Takedaに向けたビジネスの変革を支えるIS/ITの変革とディジタルへの取り組み」

第60回例会報告

創業 1781 年の歴史ある企業で、全てのことにおいて患者さんを中心に考える企業文化の中から、ビジネスをサ ポートする IT の取り組みを講演頂いた。

 

icon-check-square-o IT 変革の取組み

大きく分類すると以下の4つに集約される。

1)組織改革

2)ビジネスプロセスのハーモナイゼーションとビジネスプロセスを支援するハーモナイゼーション

3)デジタルへの取組み

4)インフラストラクチャーの統合化

過去に 4 つの企業買収を行いそれぞれの機能が分散していたが、全体最適を目的としての取組みを実施してい る。まずは 4 つの企業ごとに財務、人事、IT 等のグローバルリーダーを任命し、それぞれのファンクションの配 下で改革を進めている。

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1)組織改革

4 つの拠点毎に同じ組織機能となるインフラ等が存在し、ファンクションとリージョンの 2 つの切り口で改革を 実施した。ファンクションについてはインフラグループ等をグローバルで 1 つの組織に統合して、インフラとサ ービスを 1 つに集約した。他にも SAP、MDM、メール、セキュリティ等も同様にしてグローバルで一つの組織 と機能に集約した。また、ビジネス部門毎にグローバル責任者を作り、IT の優先順位を決めてプロジェクトへと 展開している。リージョンは 3 つに集約した。目的はリージョン毎のグローバルシステムのデプロイメント計画 と導入にある。例えば、リージョン毎にシステムデプロイメントのスケジュール、評価、チェンジマネジメント 等の役割を担う。

ガバナンス

① 最上位は ISIT ステアリングコミッティである。CIO が中心となり会社全体の予算の議論、クロスファンク ショナルなプロジェクトのプライオリティ、大きなプロジェクトのステータス管理を実施している。メンバ ーは社長のダイレクトレポートメンバーで構成されている。

② ファンクショナルステアリングコミッティはファイナンスやマニュファクチャリングが存在し、戦略、プラ イオリティをベースにプロジェクトの立案、計画立案、ロードマップ立案等を実施している。ビジネスプラ イオリティを理解し、グローバルへ展開すべき機能とリージョン毎に行うべき機能を見極めて 3~5 年のロ ードマップを作成している。

③ リージョナルステアリングコミッティは、リージョン毎のプライオリティを考慮して主にコマーシャルを中 心としたロードマップを作成している。

2) ビジネスプロセスのハーモナイゼーションとビジネスプロセスを支援するハーモナイゼーション

課題はビジネスプロセスとシステムソリューションのハーモナイズである。バックオフィスは直接お客様に関係 していないため、グローバルハーモナイゼーションを推進するために SAP で対応している。グローバルでファ ンクション毎にビジネスプロセスオーナーを設けて、ハーモナイゼーションする目的で議論を行ってきた。具体 的な行動はこれから行う予定。買収した企業が導入した SAP をベースにグローバルハーモナイゼーションを展 開しているため、日本は秋から始める予定。

3) デジタルへの取組み

End to End のバリューを社外に向けて発信することが急務であり、キーワードとしてデジタルが最も重要であ る。患者、医者、薬剤師等の医療に関わる人がデジタルで繋がりつつあるため、価値を高める企業を目指してい る。また、薬を超えた価値を提供し、患者同士が SNS で繋がるとこや、医者が情報を取得することを目指してい る。デジタルアクセラレータープログラムでは以下の 4 つを実施した。 ① ファウンデーションとなる基礎固め。 ② エデュケーション。ビジネス部門にデジタルの価値を理解してもらう活動やアイデアを引き出す。 ③ エクスペリエンテーションは、リージョン毎に人を配置してアイデア出しと、評価をして面白そうなアイデ アは一定期間実験を行う。その後に評価を行い効果が見込まれるものに関してはスケールアップする。 ④ アウトサイドインは、外部の取組みを社内に取り入れているという活動を実施している。

4) インフラストラクチャーの統合化

グローバル統合に向けてテクノロジーマネジメント、サービスデスク、フィールドサービス、データセンター、 メール、ネットワーク、セキュリティ等を対象に行っている。

icon-check-square-o 質疑内容

Q.ワールドワイドでコラボレーション、インテグレーションする時に、情報の閲覧や管理に関してどのようなこ とをされているか?
A.医薬品の研究開発においては、グローバルで一つのシステムに既に出来上がっている。副作用等の情報は数日 あるいは、何時間以内に販売した商品の情報を全ての国に報告しなければならないため一元管理されている。

Q.SAP はこれから統合すると話されたが、M&A した会社のテンプレートを使用するのはなぜか。システムをグ ローバルで1つにできるのか?
A.目指している姿1つのシステム。日本は現場の効率化を求めているが、海外はユーザ部門から離れた専門部署 が標準的なサービスを提供して、経営目線として行ってる違いがある。過去においては、IT の議論の前にビジネ スプロセスの話をしてきた。例えばファイナンス、マニュファクチャリングなどをファンクション単位に決めた。 決め方として世の中のベストプラクティスではなく、社内のリージョン毎に実施しているやり方の中からベスト なテンプレートを決めて活用している。

Q.デジタルの新しいソリューションを作るプロセスを具体的に聴きたい。デジタルアクセレーターが存在して、 組織的に進める方法や全体をまとめるには、どのようなことをされているのか? また、具体的に進めてることが あればお聞きしたい。
A.様々なアイデアの中から選択して実施して、外部の有識者を招いて判断をしているが明確な基準は設けられて いない。例えば、薬の営業であれば従来の方法と、デジタルで実施した方法をまとめてマネージすることを行っ ている。

Q.内製化は会社の方向性として行っているのか? 人材育成面ではどうなのか?
A.M&A した会社毎に文化が異なる。海外は内製化の比率が高く日本は低い状態だったが、組織のトランスフォ ーメーションを行う中で、内製化の比率を日本も含めて高める方向で進めている。ファンクション毎の標準的な 業務を決めているため、必要な技術や手順はグローバル標準化されており習得することができる。

 

坂本克也(BI-Style株式会社・BSIA運営委員)

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