第55回例会報告:早稲田大学・井上達彦教授「模倣の経営学~偉大なる会社はマネから生まれる~」

第55回例会報告

今回の例会は講演者がひたすら話す形とは異なり、参加者を巻き込んで進めるワークショップスタイルで実施された。最初にアイスブレイクとして席が隣り合った2人で互いの似顔絵を30秒で描く。目的として、短期間で観察を行い、特徴を捉えることであった。互いに似顔絵を真剣に描いて見せ合う時には、笑顔がこぼれて各テーブルで賑やかな会話で溢れた。アイスブレイクにより個人間、講演者と参加者の距離感が一気に縮まり、いつもの様子とは異なり和やかな雰囲気で例会を開始することになった。

井上 達彦氏のご講演の概要

icon-check-square-o 良い模倣と悪い模倣

私たちが生活の中で接するものには様々な模倣がある。「良い模倣」と「悪い模倣」に分類した時の特徴と、具体的にどのようなものが存在するかを2人で議論を行った結果以下の意見が出た。「良い模倣」の特徴として、コンセプトにして改善すること、良いものを真似すること、利用者を喜ばせることなど。逆に「悪い模倣」としては、利用者を欺くことなどの意見が出て盛り上がりを見せた。まとめてとして、良い悪いは倫理的な見方があることと、利用者にとってあるいは社会全体としてどうなのか、経済性はあるのか、合理性はあるのかといった意見でまとめられた。参加者にとって納得できる内容であった。

icon-check-square-o 模倣者のアドバンテージ

模倣者が存在するということは、最初に実施した革新者が存在しているはずである。まさしく、マクドナルドは模倣者であり、最初の革新者となるホワイトキャッスルが存在した。アップルのiPodも模倣であり、革新者のシーハン、MPマンが存在している。興味深いことに模倣者が投資するコストは、革新者の60%?75%程度と言われている。イメージとして真似をするには低額の投資で実現できると思われているが、実際は多額の投資をしなければならない事も分かっている。加えて、先駆者の失敗や使いにくい点の分析を行い、試行錯誤を行い続けて初めて革新者を超える存在になる。また、革新者は2.2%しか市場から利益を回収できていないという調査もある。つまり、模倣することには大きな潜在的な市場が眠っていることを気づかせてくれている。従って、新規ビジネスを実施するタイミングとしては、初期の段階ではなく、ある程度成熟して市場に普及してきた状態で参入することが最も良いタイミングと言える。二番手として迅速に行動するのであればビジネスチャンスは十分にあるというのが研究結果で理解されている。

現代は良くも悪くも模倣の時代である。グローバル化し新興国企業の台頭と共にデジタル化とインターネットによって、短期間に分析を行い模倣できる環境が整いつつある。模倣する企業は極めて競争力が有り強いと言える。まさしく、フェイスブック、ウーバーもそうである。つまり、現在は模倣の時代であると断言できる。

模倣の強みに関するロジカルな分析を行うことで企業戦略を紐解くことができる。例えば、後発として先駆者を追い抜く戦略を見せたのはコカ・コーラである。「缶コーヒーといえばUCCコーヒー」という定着したブランドを変えたコカ・コーラは、UCCの成功した方法を真似た。単純に模倣を行い自動販売機の数をUCCの4倍にすることで、コカ・コーラのジョージアコーヒーを一気に根付かせたのである。投資コストを掛けて業界トップに躍り出る作戦に成功した例である。

このように実際の企業の事例を研究することで様々なタイプの模倣があることが理解されている。とても興味深い話の内容に釘付けになり、集中して話を聞くことができた。

icon-check-square-o 結論

今回の例会の特徴は議論しつつも、自分の頭で考えて進めるスタイルのためとても新鮮であった。また、システムを商いとして携わる人々の集まりの中で、ビジネスモデルの分析を通して考えることで、普段使う脳とは異なる部分をフル回転しながら進めたため脳の疲労感も正直あった。ビジネスシステムイニシアティブ協会としてはビジネスに基点を置いた活動を行う点を目標にしているため、今後の例会のコンセプトに大きな刺激を与えて頂いた内容であることは間違いない。引き続き、例会の内容をウォッチして頂き、今後の活動に注目して頂きたい。

icon-check-square-o 質疑応答

質問1:コンサルタント業界に当てはめるとどうなるのか?
回答2:多種多様な業界との繋がりを作ることができる優位性を生かして、業種別に優れている部分を当てはめることができるのがコンサルタント業界と考える。
質問2:ビジネスを成功した人は最初から模倣しようとしたのではなく、結果として模倣をして成功したと後から分かることが多いのではないかと考えているが、実際どうなのか?
回答2:意図的に行う人もいるが、ご指摘のように無意図的に実施した結果が模倣となる事も実際はある。

坂本 克也(BI-Style株式会社・BSIA運営委員)

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