第62回例会報告:八十二銀行 「FinTech 銀行が受けるインパクト」

第62回例会報告

既にバズワードと化した感もある「FinTech」だが、その内容は既存技術の組み合わせによるサービスや評価途上の新しい技術によるブレイクスルーの可能性などを包含しており、一言で表すのは難しい状況である。
銀行のシステム部門がみる「FinTech」について、これまで調査された内容と共に、現段階で想定する影響と対応の方向性について株式会社八十二銀行、佐藤宏昭氏より紹介があった。
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icon-check-square-o  Fintecについて

Finance+Technologyの造語であり、
2015年初めから1年半で、Googleの検索件数が約10倍となった。
日本の金融業界で一般化されたのは2015年の2月2日号の「週間金融財政事情]という雑誌での、「フィンテックと取り込め」という特集である。
Fintecを推進するのは、Fintec企業と呼ばれる貸出/決済/送金などの金融サービスを提供する企業である。ベンチャーや小規模企業が多く、海外では一千社を超える。

 icon-check-square-o 金融機関のIT化の歴史

1) 1960~1970年代、第1次、第2次オンライン
インフラ、データ、アプリなどホストコンピュータの時代
2) 1980~1990年代 第3次オンライン
インフラ、データは、ホスト及びオープン基盤。アプリは、ホスト勘定系及びクラサバの情報系。コールセンター、ファームバンキングなどのチャネルが導入される。
3) 2000年代~現在
ネットバンキング、モバイルアプリが導入。インフラ、データはホスト、サーバ、クラウドに展開。
4) 現在~
金融イノベーションの時代、ブロックチェーン、API、AIがキーワード。

 icon-check-square-o Fintecの分類と事例

・個人向け資産管理:家計簿ソフト、ロボアドバイザー、ソーシャルトレーディングなど
・決済/送金:オンライン決済、海外送金、ビットコインなど
・個人向け融資:オンライン融資、融資仲介プラットフォーム、オンライン質屋など
・法人向け融資:オンライン融資、融資仲介プラットフォーム、低流動性資産販売など
・経理支援:クラウドベースの法人会計支援(Freee、Money Treeなど)
・資本調達:クラウドファンディングによる出資仲介
・保険:保険購入アドバイス、少人数向け個別保険
・トレーディング:投資関連メディア、ビックデータ解析サービスなど
国内事例の紹介
・ロボアドバイザー
お金のデザインについて、9つの質問に答えるだけで、最適な投資ポートフォリオを提案してくれる。(THEO)最低10万円から可能。アドバイス料は年1%。このロボアドバイザーで年に1%以上の収益が上がれば黒字化する、というもの。統計では、33%の利益が上がったとのこと。

 icon-check-square-o 注目される分野

1) 決済
スマホでのカード決済や携帯電話番号入力による決済などがある。スマホ装着型(Squareなど)、コード埋め込み型(ApplePayなど)がある。小口決済の手数料問題の解決を目指す。
2) 送金
・海外送金
Western Union、EarthPortなどが国内に参入。ブロックチェーンによるP2Pの送金が実証段階にある。マネーロンダリングへの対応が重要となる。
・国内送金
インターネット、モバイルが基盤銀行APIを利用したインターネットバンキングとの連携アプリなどがある。
3) 融資
・ソーシャルトレーディング→貸し手と借り手のマッチング
・トランザクションレンディング→決済などのトランザクションデータを利用して、融資を行うモデル。財務情報に乗らない情報による融資と言える。
4) 仮想通貨
ブロックチェーン。分散型台帳。ネットワーク参加者間で価値の移転が認証される。
5) 個人向け資産管理
個人向けは、UI、UXに優れる。銀行から見た有望な提携可能先だろう。

 icon-check-square-o Fintecを推進するテクノロジー

1) ブロックチェーン
P2P上のコンピュータ群を使って権利移転を記録、認証する仕組み
2) AI
なぜ、今ブームなのか?それは、ビッグデータが活用できるハードウェア基盤、機械学習の発展などが背景にある。そもそも人工知能とは何か?ということがある。人工知能搭載等の言葉が飛び交っているが、明確な定義は無いのが現状であろう。
3) AIの3つの種類
・計測型:自動運転、掃除ロボットなどで、センサーやカメラのデータを利用。
・探索型:チェス、将棋システムなどで、解に辿り着くための手段の候補を大量に作成、分析し、最適なものを選択する。
・知識型:既存の知識を情報源として蓄積し判断材料とする。IBMのWatsonなど。
4) APIバンキング
銀行サービスをAPI化。外部のチャネルからの接続を容易にする。
5) ビッグデータ
次の10年で、データは今の44倍になると予想されている。また、その80%のデータは非構造化データとなる。これらを活用するハードウェア、ソフトウェアが発達してきている。

 icon-check-square-o Fintec対応に向けた法的規制

・金融持株会社の規制緩和の議論→Fintec企業への金融機関の出資拡大が狙い
・銀行法の一部改正→情報通信技術進展の環境変化への対応のため

 icon-check-square-o 質疑応答

Q.銀行はFintecベンチャーにどう接触するのか?
接触は進むだろう。接触する場所も日本だけでなく、シリコンバレーなど選択肢は広い。数多くのスタートアップを見極めていくことになるだろう。
Q.地域銀行として、メガバンクとの違いは?
もちろん、地域に店舗展開することが中心となる。ITは独立的にビジネス展開、ブランディングを行う可能性もあるかもしれない。また、銀行は、規模だけの問題ではない。銀行の営業店のコストは大きくない。大きなコストはもちろん人件費である。合併しても、人員の正規化が進まないとメリットはでないものだ。

熊野憲辰(株式会社リフレイン・BSIA運営委員)

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